© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
『悪魔の追跡』70年代に産み落とされた、カー・アクション+オカルトの悪魔合体
どこまでも脅かされ続ける安全空間
ピーター・フォンダ演じるロジャーは、オートバイ・レーサーという設定。初登場からレース・シーンだし、親友フランクと競争してそのライディング・テクニックを披露する場面もある。キャンピングカーの後部にオフロードバイクが備え付けられているから、てっきり筆者は「クライマックスでロジャーが単身バイクに乗り、悪魔崇拝者たちと迫真のバトルをする」ものだと思い込んでいた。
何せピーター・フォンダは、『ワイルド・エンジェル』(66)や『イージー・ライダー』(69)で颯爽とバイクにまたがり、本人もバイカーとして知られる俳優である。だが、いつまで経っても景気の良いバイク・アクションはやってこない。あくまでロジャーたちはキャンピング・カーにとどまって、ライフルをぶっ放し、カルト教団に立ち向かうのである。
『悪魔の追跡』© 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. Renewed 2003 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
確かにピーター・フォンダが一人バイクで無双アクションを繰り広げてしまったら、あまりにもヒロイックになり過ぎてしまう。彼はマッドマックスのような英雄ではなく、単なる一市民なのだから。キャンピング・カーこそが彼らにとって最後の安全空間であり(ガラガラヘビがいたりするけど)、その安全を脅かす者からひたすら逃避することが、本作のキモなのである。
『ローズマリーの赤ちゃん』が、ローズマリーにとっての安全空間=アパートがどんどん狭まっていく物語とするなら、『悪魔の追跡』はその安全空間がどこまでも脅かされ続ける物語なのだ。ちなみに悪魔崇拝者の一人を演じているクレイ・タナーは、『ローズマリーの赤ちゃん』では悪魔そのものを演じている。二つの作品を結ぶ不思議な符号といえるだろう。
最後にトリビアをひとつ。監督のジャック・スターレットは、エキストラとして実際の悪魔崇拝者を雇ったと主張したのだが、何ら信ぴょう性のあるものではなく、どうやら宣伝のためのブラフだったらしい。映画本編だけでなく、その裏話すら胡散臭いのがいかにも『悪魔の追跡』っぽい。サイコーではないか。
(*)https://ew.com/article/2006/06/23/tarantino-and-rodriguez-talk-grind-house/
文:竹島ルイ
映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。
『悪魔の追跡』
9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
提供:キングレコード 配給:コピアポア・フィルム
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