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『ラブ・アクチュアリー』ジョニ・ミッチェルの名曲”Both Sides Now”(青春の光と影)がもたらしたもの

(c)Photofest / Getty Images

『ラブ・アクチュアリー』ジョニ・ミッチェルの名曲”Both Sides Now”(青春の光と影)がもたらしたもの

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原作ではどう描かれていた?



 ちなみに、ベースとなったジョブズの伝記本ではこの曲が全く別の形で登場する。作者アイザックソンは取材の中でジョブズのipodのプレイリストを見せてもらい、そこでジョニ・ミッチェルの楽曲が流れるのだ。


 まずはジョニが子供を養子に出したことを歌った”Little Green”という曲。ジョブズ自身も幼い頃に養子となった経験を持つ。この選曲を受けて、作者が彼に「そのこと(養子だったこと)について最近でもよく考えるのか?」と問うとジョブズは「いや、それほどでも」と答え、むしろ「このごろは、生まれについてよりも歳を取ることについてよく考える」と続ける。


 そういった流れで続けて再生されるのが”Both Sides Now”。『ラブ・アクチュアリー』と同じ30年後のバージョンである。この曲についてジョブズは「人がどう歳を取ってゆくのかはとても興味深いよ」と語っている。こういった記述の印象深さゆえに、脚本家のアーロン・ソーキンも脚色にあたって、人生や心の移り変わりを象徴するものとして、何らかの形で映画に織りこみたいと考えたのだろう。


『ラブ・アクチュアリー』予告


 『ラブ・アクチュアリー』と『スティーブ・ジョブズ』。テーマもジャンルも作風も、それに登場人物の数もまるで異なるこれらの作品の中で、いずれもその支柱となるような重みと深みをもたらしたこの楽曲。言い換えるならば、これら二つの作品にある種の魂を与えた存在と言っていいだろう。


 まだ映画をご覧になっていない方も、すでに映画をご覧になった方も、一度、この曲にじっくり耳を傾けながら映画を鑑賞してみることをお勧めする。きっと映画から流れ込んでくる光と影がより明確となり、作品世界を深く味わうことができるはずだ。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『ラブ・アクチュアリー』

 価格 ¥1,500+税

 発売元・販売元 株式会社KADOKAWA


© Photofest / Getty Images 

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