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『ラブ・アクチュアリー』ジョニ・ミッチェルの名曲”Both Sides Now”(青春の光と影)がもたらしたもの

(c)Photofest / Getty Images

『ラブ・アクチュアリー』ジョニ・ミッチェルの名曲”Both Sides Now”(青春の光と影)がもたらしたもの

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『ラブ・アクチュアリー』あらすじ

12月のロンドン。クリスマスを目前に控え、誰もが愛を求め、愛をカタチにしようと浮き足立つ季節。新たに英国の首相となったデヴィッドは、国民の熱い期待とは裏腹に、ひと目惚れした秘書のナタリーのことで頭がいっぱい。一方街では、最愛の妻を亡くした男が、初恋が原因とも知らず元気をなくした義理の息子に気を揉み、恋人に裏切られ傷心の作家は言葉の通じないポルトガル人家政婦に恋をしてしまい、夫の不審な行動に妻の疑惑が芽生え、内気なOLの2年7ヵ月の片想いは新たな展開を迎えようとしていた…。


Index


総勢20人以上を一挙に束ねた圧巻の群像劇



 群像劇の面白さは、複数の登場人物たちがどこでどのように絡まり合い結末へ向かって収束していくのか予想がつかないところにある。こと10個の物語(登場人物は20人以上!)が同時進行する難題に挑んだ本作について言えば、その筋書きが果たしてラストまで整合性を保ち得るのか、または光のあたるべき人にきちんと隈なくあてられているかどうかも含めて、作品成功の鍵を握るのは何よりも書き手の筆致ということになるだろう。


 だが、英国随一の書き手と言われるリチャード・カーティスは、初監督作でこのハードルを軽々とクリアしてしまった。それどころか「なぜ群像劇にしたのか?」という問いにも「映画製作はとにかく時間がかかるもの。一本あたりにかかる年月は約3年。これだと一生のうちに手がけられる本数も自ずと限られてしまいます。だから私は、一度に複数の物語を描いてみようと思ったんです」と涼しげに語っている。


 そんな類稀なる才能を持った彼が「この映画が生まれた源泉のひとつ」と語るのが、ジョニ・ミッチェルの”Both Sides Now”(青春の光と影)という名曲だ。


Joni Mitchell - Both Sides Now 


 『ラブ・アクチュアリー』には”All You Need Is Love”や”God Only Knows”など、とにかく印象深い曲が多く散りばめられており、公開当時はサントラ版CDも爆発的なセールスを記録したわけだが、映画の中盤付近でしっとりと流れるこの曲に関してはその名曲群の中でもどこか別格あつかいの印象すら受ける。


 エマ・トンプソン演じるキャラクターは、劇中、「かつて私の感性はジョニ・ミッチェルの歌によって覚醒した」と口にするが、このセリフはリチャード・カーティスの人生とも重なるようだ(彼もまたジョニの音楽に影響され続けてきた一人なのだという)。


 その上、”Both Sides Now”に関して言えば、カーティスは本作の脚本に取り掛かる前から30年ぶりにセルフカバーされたこの新バージョンの楽曲を聴き続け、心を震わせていたという。本作の編集段階では彼が自宅のレコード部屋にこもって、場面にふさわしい楽曲候補を一つ一つ選び出していったと言われるが、この楽曲はそのような選曲枠とは別に、当初から脚本の重要部分を担っていたことは明らかである。



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