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  3. 志乃ちゃんは自分の名前が言えない
  4. 不器用な青春を照らす“音楽”という名の光『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 ※注!ネタバレ含みます。
不器用な青春を照らす“音楽”という名の光『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 ※注!ネタバレ含みます。

不器用な青春を照らす“音楽”という名の光『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 ※注!ネタバレ含みます。

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生きづらさに向き合う音楽映画の系譜



 押見修造の同名漫画を原作とする湯浅弘章監督の長編商業映画デビュー作『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、女子高生2人の約半年間の日々を描く青春映画であると同時に、音楽映画としての魅力も併せ持つ。若い登場人物が歌や演奏を通じて友情をはぐくんだり、精神的に成長したりする劇映画は数多いが、そのすべてが明るく楽しく幸福感に満ち満ちた内容とは限らない。むしろ近年は、日常に息苦しさ、生きづらさを感じている若者が、命綱を手にするかのように音楽と出会い傾倒していくという、ほろ苦さや悲哀を伴うストーリーの映画に好作が増えてきたように思う。


 たとえば、1970年代に活躍した女性ロックバンドの伝記映画『 ランナウェイズ』(2010)。冒頭には、シェリー・カーリー(ダコタ・ファニング)が高校生時代、デヴィッド・ボウイを真似たメイクで舞台に立ち野次られる場面がある。「ロックは男がやるもの」というのが常識だった当時、彼女が異分子と見なされていたことをうかがわせるシーンだ。



 あるいは、マイケル・ファスベンダーがタイトルロールに扮した『 FRANK -フランク-』(2014)。同作のフランクは、10代の体験が原因で精神的な問題を抱え、巨大なかぶり物で常に顔を覆っているバンドリーダーだ。このキャラクターは、英国人コメディアンのクリス・シーヴィがかぶり物をかぶって演じた「フランク・サイドボトム」のほか、実在のミュージシャン複数に着想を得て創作された。



 邦画では、2015年のアニメ映画『 心が叫びたがっているんだ。』が記憶に新しい。ヒロインの女子高生・順(2017年の実写版では芳根京子が演じた)は、幼少期に両親の離婚の原因を作ったことがトラウマになり人と話せないが、歌に限っては問題なく歌えることがわかり、同級生たちとミュージカル制作に取り組んでいく。


 こうした映画において、音楽は単に楽しむための趣味などではもちろんなく、芸術表現の手段や、生業(なりわい)となるべきスキルとしてのみ位置づけるのも適切ではない。何らかの問題を抱え、周囲に馴染めない人が、絶望から逃れるかのようにすがり、他者とつながるための切実な媒体として、音楽は存在している。



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