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『ロッタちゃん はじめてのおつかい』児童文学者リンドグレーンが描く、子どもの可能性

©1993 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED

『ロッタちゃん はじめてのおつかい』児童文学者リンドグレーンが描く、子どもの可能性

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ありふれた一家の小さな末っ子



 そんなロッタちゃんは、「長くつ下のピッピ」や、「山賊のむすめローニャ」のような、スケールの大きい大冒険を繰り広げるような女の子ではない。多くの未就学児童同様に、家や近所などで遊んでいる、まだまだ世の中のことを知り得ない、ありふれた一家の小さな末っ子である。


 しかし、彼女自身は何でも知っていると確信し、できないことはないのだと、兄や姉に豪語するほどの自信家。常に大人ぶった振る舞いをしている、いわゆる“おしゃまさん”でもある。溺愛しているブタのぬいぐるみ「バムセ」を連れ歩いては、背伸びをした言動や行動で小さな騒動を巻き起こしている。このさまざまな騒動が、複数のエピソードとして映画のなかで紹介されていく。


 ロッタちゃんの住む家は、原作者の故郷である、スウェーデン南西部にある小さな町ヴィンメルビーにあるという設定だ。本作は、そんなヴィンメルビーに建設されたテーマパーク「アストリッド・リンドグレーン・ヴェールド」の開館記念作品ともなっている。撮影の多くは、カラフルな家が立ち並ぶヴィンメルビーでおこなわれた他、何度も登場するロッタちゃんの家は、原作の挿絵そっくりにデザインされた、テーマパーク内の建物が使用されている。だから、映画が映し出す世界観の完成度も非常に高くなっている。



『ロッタちゃん はじめてのおつかい』©1993 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED


 また、監督、脚本を務めたのは、同じくリンドグレーン原作の短編の実写化を手がけていたヨハンナ・ハルド。彼女は、本作の後、やはりリンドグレーン原作の『カッレくんの冒険』(96)の脚本も書いている。リンドグレーン作品の長所をよく理解しているだけに、適任というところだろう。


 本作最初のエピソードは、ロッタちゃんが着心地の悪いセーターを用意した母親に腹を立て、セーターをハサミで切り刻んで家出をするといった内容だ。彼女は隣人である親切なベルイおばさんを訪ねて、いまは使っていない部屋に居座ると、「ずっとここに住む」と宣言する。そして、自分が自宅からいなくなったことで父と母、兄と姉を悲嘆に暮れさせようとするのだ。しかし、1日も持たずにロッタちゃんの方が悲しくなってしまい、迎えにきた家族とともに自宅に帰ることになるのだった。


 面白いのが、ロッタちゃんがヘソを曲げないように「ロッタがいないとみんな悲しいよ」と、両親が帰ってくれるように頼み込むかたちをとるところだ。ロッタちゃんは機嫌をすっかり直して「すぐ帰るわ!」と抱きついて、このエピソードは一件落着となる。このように、周囲が彼女を頭ごなしに叱ったりしないところが、本作のポイントとなっている。




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