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『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』伝説の『E.T.』タッグ再び。スピルバーグと脚本家メリッサ・マシスンが作品に刻んだもの

(c)Photofest / Getty Images

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』伝説の『E.T.』タッグ再び。スピルバーグと脚本家メリッサ・マシスンが作品に刻んだもの

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『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』あらすじ

ロンドンの児童養護施設で暮らす好奇心旺盛で大人びた少女ソフィーは、ある日、子供たちに夜ごと「夢」を届ける優しい巨人BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアントに出会う。巨人の国の他の住人とは違い、優しいビッグ・フレンドリー・ジャイアント。互いに孤独だった二人はしだいに心を通わせていく。やがて、小さなソフィーの勇気は大きなBFGを動かし、イギリス最大の危機を救うことに…!


※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


 『BFG』(16)は、スティーヴン・スピルバーグ監督にとって珍しい”児童文学の映画化”である。原作は「チョコレート工場の秘密」や「マチルダは小さな大天才」などのベストセラーで知られるロアルド・ダール。単なるユニークの域を遥かに超えたエキセントリックなまでのダール節は本作でも健在で、とりわけ、優しい巨人BFGと少女ソフィーが、人間の子供を食らう悪い巨人たちを懲らしめようと英国女王のもとへ協力を要請しに出向くくだりは、素っ頓狂なほど痛快だ。


 BFGとソフィーは背丈も違うし、目線も異なる。育ってきた環境や文化も、考え方や常識だってまるで違う。しかしそれでも少しずつ心が打ち解けて、掛け替えのない親友となっていくーーー。なるほど、ここだけ見ても実にスピルバーグらしい展開だ。加えて今回は、脚本家のメリッサ・マシスンが『E.T.』(82)以来となるスピルバーグとのコラボレーションに挑んでいるのも重要なポイントである。


『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』予告


Index


『ワイルド・ブラック』『E.T.』を手掛けたマシスンの魅力



 長年に渡って友人どうしだったスピルバーグとマシスンだが、共に手掛けた作品は『E.T.』と『BFG』の二本のみ。それも『E.T.』が二人にとって”出会い”の作品だったのに対し、『BFG』は期せずして今生の別れの作品となった。マシスンは本作の完成を待たずして、2015年に65歳でこの世を去ったのである。


 二人のファーストコンタクトは1980年ごろ、『レイダース/失われた《聖櫃》』(81)の撮影現場だった。ハリソン・フォードの友人(というか恋人というべきか。二人は後に結婚、離婚している)としてチュニジアに同行していたマシスンは、足元の砂に埋もれた無数の貝殻や化石を興味深そうに見つめていた矢先、スピルバーグから「あなたはどなた?そこで何をしているの?」と不意に声をかけられたそうだ。


 そこで会話しているうちに、彼女がフランシス・フォード・コッポラ製作の『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬』(79)の脚本家だと知ったスピルバーグは、自身がこの名作の大ファンだったこともあり、いま自分が温めている企画に彼女が適任であると確信する。それが『E.T.』だった。

いま筆者の手元に『ワイルド・ブラック』のDVDがあるのだが、それを初めて鑑賞して舌を巻いた。この映画はセリフというセリフが最小限に削ぎ落とされていて、主人公の少年の視点を大切に維持しつつ、彼が乗った客船が嵐に遭遇し、乗り合わせていた黒い馬と共に無人島に流れ着くという前半部の展開が、ほぼ映像だけで見事に伝わってくる仕組みになっている。


 翻って『E.T.』の冒頭部も、セリフというセリフがほとんどなく、E.T.がこの地球上で一人ぼっちに取り残される状況がほぼ映像描写だけで描かれる。その後も全編通じて”子供の目線”が貫かれ、子供らにとって赤の他人にも等しい大人たちの顔がほとんど映し出されない手法は鮮烈だった。



『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(c)Photofest / Getty Images


 さらに『BFG』へ目を向けると、こちらも冒頭、少女ソフィーが夜中に孤児院でベッドからこっそりと起き出し、寝静まったロンドンの街を巨大な何者かがうごめいているのに気付くーーー。という一連の流れを、やはり目線や動きを大切にしながら、最小限のセリフで描いてみせる。


 よくよく考えれば、これら3作はストーリーの骨格もよく似ている。ずっと一人ぼっちだった子供(主人公)がおなじく一人ぼっちの他者(人間ではない)と出会い、にわかに心を共鳴させあいながら、最後には互いの勇気を振り絞って何かを成し遂げる、というわけだ。すごく極端な言い方をするなら、マシスンは初脚本作『ワイルド・ブラック』の時点で、後の『E.T.』と『BFG』に受け継がれる語り口の原型のようなものを既に確立させていたのかもしれない。




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