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『ロッタちゃん はじめてのおつかい』児童文学者リンドグレーンが描く、子どもの可能性

©1993 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED

『ロッタちゃん はじめてのおつかい』児童文学者リンドグレーンが描く、子どもの可能性

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子どもを尊重する姿勢と信じる心



 ベルイおばさんが病気で寝込んだときには、お見舞いを持っていったりお使いを引き受けるなど、天使のような面もあるが、一方で怒りやすく意固地な面を見せるなど、本作は、“子ども”という存在を見事なリアリティで、いきいきと表現していると感じられる。こういった点こそが、原作者アストリッド・リンドグレーンが偉大な児童文学者である大きな理由だと考えられるのだ。


 そんな原作者の伝記映画『リンドグレーン』(18)では、なぜ彼女がこんなにまで子どもの気持ちが分かるのかが、よく分かる内容になっている。アストリッドは、おおらかな家族とともに農場で走り回って育ち、突飛な発想を披露したり、めちゃくちゃなダンスを踊ったりと、自由奔放な子ども時代を過ごしていた。そんな彼女の振る舞いを、もし家族が無理に矯正していたとしたら、スウェーデンを代表し、紙幣に印刷されたほどの偉大な作家アストリッド・リンドグレーンは存在していなかったかもしれない。



『ロッタちゃん はじめてのおつかい』©1993 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED


 「ロッタちゃん」シリーズなどのリンドグレーン作品の多くに共通しているのは、それぞれの子どもをひとりの人間として認め、自主性を尊重するといった姿勢だ。やりたいことをできる限りやり、自由な発想や個性を伸ばす時代を経験することができれば、人は成長してからもさまざまな可能性を発揮することができるのではないか。そんな想いが、作品の中でいきいきと描かれた子どもたちの姿に象徴されていると感じられる。


 本作では、ロッタちゃんの強情な個性がポジティブにはたらき、クリスマスを前に奇跡を起こす展開も見られる。それはまさに、子どもを尊重する姿勢と、信じる心がもたらした、ひとりの少女の可能性を表現したものだといえるだろう。そんな温かさに包まれることで、観客はロッタちゃんはもちろんのこと、ロッタちゃんの家族や、隣のおばさん、町の人々、そして彼女たちを取り巻く「ロッタちゃん」の世界を丸ごと愛することができるのである。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter:@kmovie




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作品情報を見る



『ロッタちゃん はじめてのおつかい』2Kリマスター版

配給:エデン

3月1日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA 、新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国にて順次上映中。

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