2024.06.17
あふれ出すトニー・スコットの旨味と持ち味
筆者は常々、スコットの初期3作、『ハンガー』(83)、『トップガン』、『ビバリーヒルズ・コップ2』(87)には、彼の持ち味が名刺がわりにギュッと凝縮されていると思っている。
すなわち、芸術性の高い怪奇スリラー(ハンガー)を手掛けたかと思えば、乗り物をフィーチャーした新感覚のアクションドラマ(トップガン)を圧倒的な熱量とバイタリティで描き切り、その上、大ヒットシリーズの第二作目(本作)という、微妙なバランス感覚と気遣いが必要となる作品をソツなく仕上げる、いわゆる職人的な器用さとフットワークの軽さも持ち合わせている、というわけだ。
また、生涯を通じて印象的な「地上アクション」をいくつも世に遺したトニー・スコットにとって、本作はそのまさに最初の作品にあたる。
『ビバリーヒルズ・コップ2』(c)Photofest / Getty Images
序盤の宝石店での強奪シーンの緊迫感や、いくつもの車を巻き込みながら激走していく息の長いカーチェイス、ラストの荒唐無稽かつ火薬量多めの銃撃戦に至るまで、後年に繋がるトニー流アクションの起源というべきものがここには詰まっている。
それらのビジュアルスタイルがバッチリ決まっているのは、本作でもきちんと絵コンテを作成していたからで、彼はどんなに前日の撮影が夜遅くまでかかろうとも、わずかの睡眠を得ただけで早々に起き出し、その日の撮影分の絵コンテを仕上げてから撮影に臨んでいたという。