2021.03.16
『エネミー・オブ・アメリカ』あらすじ
国家安全保障局(NSA)による米国下院議員の暗殺の一部始終が録画されたビデオテープを、偶然手に入れてしまった弁護士ロバート。NSAは、彼の持っているテープもろとも抹殺を図ろうとする。NSAに図られ、何も知らぬまま社会的地位を失い、犯罪の濡れ衣を着せられてしまうロバート。そこで、元NSA職員を味方につけ、世界最強クラスの監視システムを持つNSAに立ち向かおうとするのだが....。
Index
- スケール感とスピード感。トニー・スコットが遺した傑作
- コッポラの名作『カンバセーション…盗聴…』との共通点とは?
- チームプレイでの盗聴作戦と巨大な倉庫
- 製作の裏側から見えてくるもの
- 現実がフィクションを凌駕していく時代
スケール感とスピード感。トニー・スコットが遺した傑作
万物を見通す神のような、どこか超然と構えた眼差しを持つ兄リドリー作品に比べて、弟トニー・スコットの映像は一箇所にじっと留まることを知らない。カメラは常にスピーディーに動き回り、さらには編集によって膨大な映像を掛け合わせ、緊迫感みなぎる唯一無二のビートを創り出す。それが彼の持ち味。
「トニー・スコット作品にハズレなし」とは学生時代の私の胸にいつもあった格言だが、とりわけ製作者ジェリー・ブラッカイマーとのコラボ作は、最速のスピード感と破格のスケール感とを兼ね備えた、腹にズシンとくる衝撃作のオンパレードだったのを思い出す。
『エネミー・オブ・アメリカ』予告
時として荒唐無稽で大味になりがちなブラッカイマー映画も、トニーと組んだ時だけはきちんと地に足がつき、名実ともに”無双状態”へと突入していた。中でも『エネミー・オブ・アメリカ』(98)は彼らの蜜月がほどよく円熟味を帯びた傑作と言えるのではないだろうか。