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『エネミー・オブ・アメリカ』コッポラの名作『カンバセーション…盗聴…』との比較で見えてくるもの

(c)Photofest / Getty Images

『エネミー・オブ・アメリカ』コッポラの名作『カンバセーション…盗聴…』との比較で見えてくるもの

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現実がフィクションを凌駕していく時代



 ちなみに70年代の『カンバセーション…盗聴…』の製作なかば、アメリカではウォーターゲート事件が勃発し、社会全体が大きく揺れた。同じ”盗聴”にまつわる事件だけに、スタッフやキャストが受けた衝撃は計り知れないものだったとか。コッポラはDVDコメンタリーの中で当時の心境を「この映画で描いたような事件も、いつか本当に起こってしまうような気がした」と述べている。


 翻って、20年後に製作された『エネミー・オブ・アメリカ』も、99年の公開時にはかなりぶっ飛んだアクションスリラーに思えたものだ。しかしそのわずか2年後、9.11テロを境に、米社会のあり方は大きな変容を遂げた。今となっては本作のことを絵空事などと無下に笑う者は一人もいないだろう。


 さらにあれから20年。あらゆるものがデータによって可視化される現代社会において、我々の置かれた状況はもっとずっと複雑かつ混沌とした段階へと突入している。


 『エネミー・オブ・アメリカ』と『カンバセーション…盗聴…』。それらは単にジーン・ハックマンの演じた役柄をめぐる表層的な部分のみならず、まさに”現実がフィクションを凌駕していく”というある種の預言的な側面においても、非常に高い共通性を有しているのである。


参考:

https://nymag.com/news/frank-rich/enemy-of-the-state-2013-7/

https://the-foreigner.jp/about.html

http://www.davidmarconi.com/enemy-of-the-state.html

『エネミー・オブ・アメリカ』DVDインタビュー映像

『カンバセーション…盗聴…』DVDコメンタリー



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



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『エネミー・オブ・アメリカ』(c)Photofest / Getty Images

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