2018.07.20
「人間の魂」や「生死」といった視点から浮上してくるもの
バヨナ・ワールドの攻略法をもう一度まとめておくと、まず「建築物に注意」。そして何かおかしいぞと思った時には真っ先に「地下を疑え!」ということに尽きる。もちろん子供達が重要な役割を果たすのも全てのバヨナ作品に共通すること。彼らはいずれも境界線の上で立ちすくみ、大人たちに助けを求めているが、当の大人たちはその悲鳴になかなか気づいてあげられない。
そして最後にとても大事なところに気付いた。バヨナはいつも映画の中に人間の魂や生死といったテーマを色濃く描きこむ。今回ばかりは純然たるエンタテインメントだし、それらの重いテーマとも無縁だろうと思っていたのだが、よくよく考えると「恐竜」という存在もまた、この範疇に含まれるではないか。今から6,500年前に失われたその命。今、満を持して蘇る彼らを、亡霊のごとき存在と捉えることも可能だ。ジュラシック・ワールドと聞くと華やかなイメージが伴うが、見方を変えると実は死者たちの復活の場でもある。恐竜達だけではない。ここに登場する様々な意味で「死を受け入れられない人間たち」もまた、まさしくバヨナ作品の系譜とつながることになる。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』© Universal Pictures
かくも本作は、流れ出した溶岩がジュラシック・ワールドを覆うに従って本性をあらわにし、“バヨナ・ワールド”へと反転していく。それはダークサイドから注がれた光。あぶり出された恐竜王国の本質。そこに携わる人間たちの心の闇――――我々はシリーズ5作目にして、予想もしなかった異空間へと放り出されてしまったのかもしれない。
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
配給:東宝東和
© Universal Pictures
※2018年7月記事掲載時の情報です。