2018.07.20
Index
- ようやくオファーを受諾した奇才監督が描く、恐竜王国の終焉
- 『インポッシブル』や『怪物はささやく』を彷彿とさせる場面も
- バヨナ作品の“建築物”は、精神世界の投影図でもある
- 「人間の魂」や「生死」といった視点から浮上してくるもの
ようやくオファーを受諾した奇才監督が描く、恐竜王国の終焉
これまでの『ジュラシック』シリーズとは何かが違う。14年ぶりの再始動を饗宴的なムードで祝福した前作とは違い、本作は途方もない夢が破れた後の痛みや影が亡霊のごとくつきまとう。その意味では最もダークで、底知れぬ闇を抱えた一作と言えるのかもしれない。
そんな『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を手がけたのは、バルセロナ生まれの当時弱冠43歳の名匠、J・A・バヨナ。監督デビュー作以来、ギレルモ・デル・トロからの力強いサポートを受け(デル・トロの名は本作エンドクレジットのサンクス欄で見受けられる)、その類まれなる才能を余すところなく爆発させてきた彼は、同世代監督たちの中でも一歩も二歩も抜きん出た存在と言っていい。どうやらプロデューサー陣による彼へのアプローチは、前作『 ジュラシック・ワールド』の監督探しの時から始まっていたとか。その時は「申し出はありがたいが、私はかなり準備をして臨むタイプの監督なので、準備期間の短い今回はやめておいた方が良さそう」といって辞退したようだが、ついに時が満ちた今、新シリーズ3部作の真ん中、つまり最も”変化球”が求められるポイントにて待望の登板を迎えることとなった。
だが、これは確固たるブランドが確立された超人気シリーズ。いくらバヨナといえども、今回ばかりはダークな作家性を抑え、あくまで『ジュラシック』に準じた形での“変化球”になるのだろうと思っていた。しかし、である。いざ映画の幕が上がってみて驚いた。そこには「地獄の釜のふたが開いた」とでも言うかのような、バヨナ・ワールド全開の光景が広がっていたのである。