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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』真紅に染めあげられた、シリーズの“特異点”

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』真紅に染めあげられた、シリーズの“特異点”

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“血脈の物語”からの決別



 思えばジョージ・ルーカスは、アナキン・スカイウォーカーとルーク・スカイウォーカーという父子にスポットライトを当てて、ジェダイの興亡史を紡いできた。


 フォースにバランスをもたらす“選ばれし者”のアナキンは、パルパティーン(イアン・マクダーミド)の策謀によって暗黒面に堕ちるが(=プリクエル・トリロジー)、その子ルークがジェダイの“新たなる希望”となり、帝国軍を打ち負かす(=オリジナル・トリロジー)。ジェダイに与えられたフォースという能力が、世界の歴史を変えていくのである。


 だがライアン・ジョンソンは、フォースそのものの概念をひっくり返してしまった。フォースは、ジェダイのみに与えられたものではない。誰でも習得することはできるし、誰でもその可能性は開かれているという、新しい世界観を提示してみせたのだ。


 ルークがレイに語りかける「フォースはジェダイのものではない。ジェダイが死ねば消えるなど、ただのうぬぼれ」というセリフは、旧来の概念を刷新するもの。名も無き奴隷の少年が流れ星を見つめる絵をラストカットに選択したのは、彼もフォースの使い手であることの予兆だ。ライアン・ジョンソンはインタビューでこう語っている。


「私にとって最後のカットは、ルーク・スカイウォーカー神話の解体ではなく構築であり、彼がそれを受け入れているのです。(中略)だから私にとって“過去を捨てる”というプロセスは、本当に重要で本質的な何かに到達するためのものなんです」(*2)


『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』本編ダイジェスト


 ジェダイから特権的な能力を剥ぎ取ることで、ライアン・ジョンソンは“本当に重要で本質的な何か”を目指した。それは、“血脈の物語”からの決別という言い方もできるだろう。スカイウォーカー家の血を引いた者が選ばれし者であり、その強大な力によって銀河に安定と平和を与えられるという、神話的構造。そこに大きなナタを振り落とすことで、『最後のジェダイ』はブラッドライン(血統)を断ち切ったのである。


 タイトルロゴは何故、おなじみの黄色ではなく“赤”なのか。スノークの玉座の間は何故、“赤”で覆われているのか。惑星クレイトにおける戦いでは何故、赤い鉱物の破片が舞いしきる のか。それらはすべて、ブラッドラインを暗示している。『最後のジェダイ』は、真紅に染めあげられたシリーズ最大の特異点なのだ。



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