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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』レガシーを乗り越える宿命を背負った新章

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』レガシーを乗り越える宿命を背負った新章

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』あらすじ

銀河に新たな脅威が迫っていた。砂漠で廃品を集めるレイと、元ストームトルーパーのフィンは、ハン・ソロやチューバッカと一緒に、平和を取り戻す唯一の希望を探すことになるが…。


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絶対的創造神の消失



 すべては、2012年10月30日から始まった。ウォルト・ディズニー社が、ルーカスフィルムを40億5,000万ドルで買収したというビッグ・ディールを発表。2006年にピクサー、2009年にマーベル・コミックを買収してきたディズニーは、遂に『スター・ウォーズ』シリーズもその傘下に収めたのである。そしてルーカスフィルムの新社長キャスリーン・ケネディが旗振り役となって、続3部作(シークエル・トリロジー)のプロジェクトが始動した。


 シリーズの産みの親であるジョージ・ルーカスは、クリエイティブ・コンサルタントとしてブリーフィングに参加。構想していたプロットも提供したが、最終的にディズニー側はそのアイデアを却下する。


 「彼らはレトロな映画を作りたがっていた。私はそれが好きではない。どの映画でも、私はこれまでと違うものを作ろうと懸命に努力してきた。異なる惑星、異なる宇宙船が登場する、全く新しいものにするためにね」(*1)


 ウォルト・ディズニー社のCEOボブ・アイガーの回顧録「Lessons Learned from 15 Years as CEO of the Walt Disney Company」によれば、自分のアイデアが採用されないと知ったとき、ルーカスは“動揺と裏切りを感じていた”という。


 「ジョージは、私たちが契約上何も縛られていないことは知っていたが、私たちがストーリー・トリートメントを購入することは、それに従うという暗黙の約束だと思っていたようだった。自分のストーリーが破棄されることに失望していたよ」(*2)


 ディズニーが求めていたものは、古き良きスペース・オペラの再興であり、新機軸のオルタナティヴSFではなかった。ルーカスは、『スター・ウォーズ』シリーズが完全に自分の手を離れたことを痛感する。


 「ディズニーは私が関わることにそれほど乗り気ではなかったが、もし私がそこに入れば、ただ問題を起こすだけだ。もうそんなことはできないし、私がすることはすべてを台無しにするだけだ。だから、私は自分の道を行き、彼らには彼らの道を行かせることにしたんだ」(*3)


『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』予告


 かくして、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)から30年後を舞台に描かれるエピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)は、ジョージ・ルーカスという絶対的創造神が関与しない初めてのスター・ウォーズ作品となる。そう考えると、本作においてルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)というヒーローが物語に関与せず、マクガフィン(物語を前進させるためのプロット・デバイス)としてのみ機能するというのは、非常に示唆的だ。


 新しい主人公のレイ(デイジー・リドリー)やフィン(ジョン・ボイエガ)、ファースト・オーダーを率いるカイロ・レン(アダム・ドライバー)が、姿を消したルークの行方を探索することから物語は始まる。その存在は伝説と化しているものの、最後の最後までルークは姿を現さない。それは、ルーカスに対するディズニーの偽らざる想いを反映しているかのよう。図らずも本作は、絶対的創造神の消失を物語上でもなぞっているのだ。


 ちなみにジョージ・ルーカスは、この映画を観る前は複雑な心境だったことを認めている。その率直な想いを、「元妻の結婚式に出席するようなもの」と例えたんだとか。





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