2024.07.17
シリーズに通底する、象徴的な殺人
『フォースの覚醒』には、『帝国の逆襲』、『ジェダイの帰還』で共同脚本を務めたローレンス・カスダンが参加している。彼はマイケル・アーントが執筆したオリジナル・ストーリーをリライトし、オリジナル・トリロジーが有していた空気をニュー・チャプターに持ち込んだ。インタビューでも、「私たちが求めていたのは、最初の3部作のように楽しくて、愉快で、やたら動き回るような、あまり多くを疑わない感覚だった」(*5)と述懐している。
そしてカスダンは、『スター・ウォーズ』において最も重要な通過儀礼…<父殺し>を、シークエル・トリロジー第一幕から描いてみせる。ハン・ソロ(ハリソン・フォード)が息子のカイロ・レンによって殺されるという、衝撃的な展開。ダース・シディアス(イアン・マクダーミド)、ダース・モール(レイ・パーク)、メイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)のように、“落下して死ぬ”という描写も、シリーズに共通するモチーフだ。
思えばルーク・スカイウォーカーは、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)でダース・ベイダーに右腕を切り落とされ、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)では逆に相手の右腕を切り落とすことで、父を乗り越えた。だが彼は、ダース・シディアス(イアン・マクダーミド)の「父を殺せ」という悪魔の囁きには乗らず、剣を収める。しかし中二病息子カイロ・レンは、自分の迷いをふりはらうため、父親をライトセーバーでひと突き。「ありがとう」と感謝を述べながら、その手で命を奪う。モチーフだったはずの<父殺し>が、実際の行動になってしまった。
実は、オリジナル・トリロジーでハン・ソロが死を迎えるプランも考えられていた。ハリソン・フォードが、「彼を殺した方が物語に深みが出る」と主張していたからだ。カスダンもそのプランに賛成し、三部作を締めくくる『ジェダイの帰還』でその場を設定しようと考えたが、ルーカスが強硬に反対。はからずもハン・ソロは“長生き”することになってしまう。
果たしてハン・ソロは死ぬべきか、死なざるべきか。その最終的決断は、ディズニーCEOのボブ・アイガー、監督のJ・J・エイブラムス、ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディに委ねられ、シリーズに通底する象徴的な殺人が実行されることになる。レガシーを乗り越える宿命を背負った新章は、旧シリーズをリファレンスしつつ、旧シリーズのメイン・キャラクターを葬ることで、21世紀型の『スター・ウォーズ』を提示したのだ。
間違いなくこの作品には、製作者の並々ならぬ覚悟がある。
(*1)、(*3)
https://www.hollywoodreporter.com/news/general-news/george-lucas-quips-he-sold-851545/
(*2)
(*4)
(*5)
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/star-wars-lawrence-kasdan-talks-841911/
文: 竹島ルイ
映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」( http://popmaster.jp/)主宰。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ディズニープラスにて配信中
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