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『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』民主主義の終焉を描く政治劇

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』民主主義の終焉を描く政治劇

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『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』あらすじ

ジェダイ見習いであるアナキン・スカイウォーカーは、パドメ・アミダラの護衛を命じられる。そして、しだいに彼女への恋心に気づくと同時に、自身のダークサイドに目覚めていく。一方、銀河に全面戦争の脅威が迫る中、オビ=ワン・ケノービは、密かにクローンの軍隊が製造されている光景を目にする…。


Index


ドラマティックなラブ・ストーリー



 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)の仮タイトルは、『ジャー・ジャーの大冒険』だった。もちろんこれは、『ファントム・メナス』(99)に初登場したジャー・ジャー・ビンクスの不人気を、ジョージ・ルーカス自ら皮肉ったもの。このプリクエル・トリロジー第2作では、陽気なグンガン人が物語から完全に撤退し、1作目よりもハードな物語が展開する。


 本作の舞台は、『ファントム・メナス』(99)から10年後。9歳の子供だったアナキン・スカイウォーカーは、オビ=ワン・ケノービのパダワン(訓練生)となり、才能に溢れたジェダイへと成長していた。そして惑星ナブーの女王パドメ・アミダラは、元老院議員に転身して政治家として奔走する日々。久々に再会した二人は、旧交を温め、惹かれあい、やがて恋に落ちていく。


 それはまるで、「ロミオとジュリエット」のような“禁じられた恋”。古いジェダイの掟では、感情を大きく揺さぶり、ダークサイドに堕ちる危険性を孕んでいることから、恋愛は許されていない。オリジナル・トリロジーでも、ハン・ソロとレイア姫の身分違いの恋が描かれていたが、今作はより悲劇的でドラマティックなラブ・ストーリーが綴られるのだ。


 ポール・ウォーカー、クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー、レオナルド・ディカプリオなどの候補をしりぞけてアナキン役を勝ち取ったのは、ヘイデン・クリステンセン。彼の魅力はなんといっても、その眼力。その射るような眼差しで見つめられたら、相手はたちまちのうちに心を掴まれてしまう。この映画でパドメは、彼の熱い眼差しに耐えられず何度も視線を逸らす。「そんな目で見ないで。落ち着かないわ」と言わせてしまう。ジェダイは相手の心を操るマインドトリックの使い手だが、アナキンは眼力だけで相手の心を狂わすのである。


 だがアナキンとパドメのロマンスは、世間的にはあまり高い評価を得られなかったようで、ゴールデンラズベリー賞では最低スクリーンカップル賞にノミネートされてしまった。ジョージ・ルーカスは制作前にその懸念を示していたが、悪い形でそれが的中してしまったことになる。


 「次回作はラブストーリーだが、それがファンにどう受け止められるかはわからない。彼らは『スター・ウォーズ』を1種類の映画として考えているからね。ラブストーリーという性質上、子供向けの映画ではなくなっている。だが、同じ年齢層をターゲットにしていることには変わりない」(*1)


 この映画を改めて観てみると、アナキンとパドメの恋が燃え上がるまでがやや性急に感じられるし、「君を想わぬ日はなかった。だが再会してみると苦しみだけだ」とか、「僕の胸は君への想いでいっぱいだ」とか、陳腐と捉えかねないセリフも多い。ハン・ソロとレイアの場合は、お互いが意地っ張りでなかなか本心を打ち明けられず、ツンデレな関係が観客をやきもきさせていた。だが、中世の騎士とお姫様のような関係性のアナキンとパドメになると、古典文学のようなセリフのオンパレードに、観ているこちら側が気恥ずかしくなってしまうのである。


 個人的な意見をいえば、『クローンの攻撃』の見どころは恋愛要素ではない。ジオノーシスで繰り広げられる、終盤のアクション乱れ打ちである。





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