2024.05.10
『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』あらすじ
ジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンとパダワン(弟子)のオビ=ワン・ケノービは、侵略の危機に瀕した惑星ナブーから女王アミダラを救出したあと、砂漠の惑星タトゥイーンに立ち寄る。そこで彼らは、ケタ外れに強いフォースを持つ奴隷の少年アナキンと出会う。激戦の末ポッドレースで勝利したアナキンは自由を得て、ジェダイの騎士になる訓練を受けることになる。その後、一行はナブーに帰還、女王とアナキンは侵略軍に立ち向かい、オビ=ワンとクワイ=ガンの前にはダース・モールが立ちはだかる。だがこの侵略はまだ、再び力を取り戻したシスの邪悪な計画の序章に過ぎなかった…。
Index
22年ぶりに監督復帰したジョージ・ルーカス
『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)が公開された1999年のことをよく覚えている。『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)以来16年ぶりの新作とあって、公開が近づくにつれて熱気はいやがうえにも高まっていた。当時筆者はニューヨークに語学留学していて、学校のボンクラ男子たちの間では『スター・ウォーズ』の話でもちきり。旧3部作(オリジナル・トリロジー)を擦り切れるほど予習し、パソコンのQuickTimeで『エピソード1』予告編を観まくって、心身ともにジェダイ・モードで映画館に駆け付けたのである。
観に行ったのは、確か公開日(5月19日)の翌日か翌々日。それでも劇場は、ボバ・フェットやダース・モールのコスプレに身を包んだ熱狂的ファンで埋め尽くされていた。真横の席では、ストームトルーパー同士で何やら話し込んでいる。真後ろの席では、『スター・ウォーズ』のシャツを着込んだ家族がバカでかいポップコーンを頬張っている。スクリーンの真ん前では、子供達が奇声を上げながらライトセーバーでチャンバラしている。もはや雰囲気は、映画館というよりもアミューズメント・パーク。誰かと目が合うたびに「May the force be with you.」と声をかけられたものだ。
そして、「A long time ago in a galaxy far, far away‥‥(遠い昔 はるかかなたの銀河系で…)」がスクリーンに映し出されるやいなや、観客はやんややんやの大騒ぎ。その後も、R2-D2が登場すれば大拍手、C-3POが登場すれば大絶叫と、日本では味わえないようなお祭り騒ぎ。あんな映画体験は、後にも先にもこれ一度しかない。『スター・ウォーズ』新作をファンと一緒に鑑賞できる喜びを、とことん味わうことができたのである。
もともとジョージ・ルーカスは、『ジェダイの帰還』で偉大なサーガを完結させるつもりだった。だが盟友スティーヴン・スピルバーグが、『ジュラシック・パーク』(93)で古代の恐竜たちを見事なCGで蘇らせたことに感嘆し、今の特撮技術であれば、新しい『スター・ウォーズ』を語るにふさわしいルックを獲得できると判断。アナキン・スカイウォーカーがダークサイドに堕ちていくまでを描いた新三部作(プリクエル・トリロジー)のプロジェクトが、遂に始動する。
『帝国の逆襲』(80)ではアーヴィン・カーシュナーに、『ジェダイの帰還』ではリチャード・マーカンドに演出を任せたように、ルーカスは監督に復帰するつもりは毛頭なかった。『アポロ13』(95)や『ビューティフル・マインド』(01)で知られるロン・ハワードは、『ファントム・メナス』の監督を打診されたことを明かしている。彼は、俳優時代にルーカスの出世作『アメリカン・グラフィティ』(73)に出演している仲でもあった。
「ルーカスは僕に監督の話をもちかけてきた。ロバート・ゼメキス、僕、そしてスティーヴン・スピルバーグとも話したそうだよ。でも皆が“ジョージ、君がやるべきだ!”と言ったんだ。その時点で、誰もそのオファーを受けようとはしなかったと思う。それはとても名誉だけど、あまりにも大変なことだったからね」(*1)
周りからの説得もあって、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)以来22年ぶりにルーカスは監督復帰。もともと内向的な性格の彼にとって、不安は大きかったはず。『ファントム・メナス』(見えざる脅威)とは、1,000年前に滅んだはずのシス(フォースのダークサイドを操る者)を表したタイトルだが、久々の監督業にチャレンジするルーカス自身の想いも込められていたのかもしれない。