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『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

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ネット時代の被害者、ジャー・ジャー・ビンクス



 おっちょこちょいでトラブル・メーカーの新キャラクター、ジャー・ジャー・ビンクス。公開当時、とにかく彼に対する風当たりは強かった。それは単なる不人気というよりも、憎悪に近いレベル。


 第20回ゴールデンラズベリー賞では、最低助演男優賞を受賞。イギリスの大手映画レンタルサイトが行った「映画史上もっとも不愉快なキャラクターは?」というアンケートでも、堂々の第一位。毒っ気が強いことで知られるアニメ『サウスパーク』では、喋り方がジャー・ジャー・ビンクスとそっくりな生き物が登場し、サウスパークの町人たちをイラつかせるというエピソードが作られた。「The Beginning: Making Star Wars: Episode I The Phantom Menace」というドキュメンタリー映像には、「ジャー・ジャーが今作のキーとなる」と語るルーカスの姿が収められているが、悪い形でそれが的中してしまった。


 ジャー・ジャー・ビンクスを演じたアーメド・ベストは、「私のパフォーマンスが失敗に終わり、みんなをがっかりさせてしまった」と落胆を隠さない。だが、視覚効果スーパーバイザーとしてキャラクターに生命を吹き込んだジョン・ノールは、「私はこの偉業を誇りに思っている。私が取り組んだ中でも、最もエキサイティングでチャレンジングなものだった」と擁護。ルーカスは過去作を引き合いに出して、こんなコメントを残している。


「私が『新たなる希望』を撮ったとき、みんなC-3POに対して同じような感情を抱いていた。みんな彼を嫌っていたよ。彼は子供っぽすぎるし、ジョークもひどいと。『帝国の逆襲』ではそれを逆手に取って、彼をからかったり、鬱陶しい事実を認めたりもした。そして3作目ではイウォークで同じことをやった。みんな大騒ぎだったね」(*3)


 特定のキャラクターがディスられることは、オリジナル・トリロジーでルーカスは経験済み。むしろ彼は、その批判ポイントを映画にとりこむことによって、ストーリーに奥行きをもたらしたのである。だがルーカスにとって計算外だったのは、ジャー・ジャー・ビンクスへの批判の声が、ネットを通じて高まるようになってきたこと。90年代後半に入ると、PCの普及につれて、誰しもが簡単にインターネットにアクセスできるようになっていた。


「ネット経由の批判が生まれてきた。メディアもファンの声に耳を傾けるようになった。ファンダムや特定のグループやブログがひどいことを言えば、彼らはそれを真剣に受け止める。そこから引き返すのはとても難しかったんだ」(*4)


 『帝国の逆襲』から『エピソード3/シスの復讐』まで(ルーカスフィルムがディズニーに買収されるまで)の制作費は、ルーカスが100%出資。彼の巨大な自主映画なのだ。『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)以降、ジャー・ジャー・ビンクスの出番が激減してしまったのは、「ネット時代において、コンテンツ人気はファンダムの声に大きく左右される」という事実に、ルーカスが気づいてしまったからではないか。キャラが嫌われてしまっただけなら、ルーカスはかつてのC-3POのようなアプローチで続投させたはずだ。


 作り手とファンダム。それはまさに、ドキュメンタリー映画『ピープルVSジョージ・ルーカス』(10)で描かれていたものだ。筆者は『ファントム・メナス』を観るたび、その関係性に思いを馳せてしまうのである。


(*1)https://ew.com/article/2015/11/25/ron-howard-george-lucas-star-wars-episode-i-phantom-menace/

(*2)https://www.empireonline.com/movies/features/star-wars-archive-george-lucas-1999-interview/

(*3)(*4)https://www.starwars.com/news/star-wars-episode-i-the-phantom-menace-oral-history



文:竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。



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