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『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

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クライマックスのクロス・カッティング構造



 ちょっと視点を変えて、『ファントム・メナス』の構造に目を向けてみよう。本作は、オリジナル・トリロジー最終章を飾る『ジェダイの帰還』と非常に似ている点がある。この映画では、3つの場面から成るクロス・カッティングでクライマックスが構成されていた。


①森の惑星エンドアで、デス・スターのシールド発生施設を破壊しようとするハン・ソロ、レイア姫たち

②デス・スターに一斉攻撃をしかけるランド・カルリジアンら反乱軍の攻撃部隊

③パルパティーン皇帝の目の前で、ダース・ベイダーと一騎打ちするルーク・スカイウォーカー


 ①はイウォークたちの活躍を描く地上戦、②はミレニアム・ファルコンやスター・デストロイヤーが入り乱れる空中戦、③はライトセーバーを交えるチャンバラ。3つの異なるアクション・シークエンスをモンタージュさせることで、ドラマが重層的に厚みを増していく。


 非常に巧みなのは、①のミッションが成功しないと、②のミッションが実行できないこと。イウォークたちの助けを借りてハンたちがシールド発生施設を破壊することで、それまで劣勢を強いられていた反乱軍は、遂にデス・スター襲撃に向かう。そして②のミッションが成功すると、今度は「デス・スターの内部にいたルークが無事脱出できるか」という別のサスペンスが発動する。3つのストーリーが相互に作用することで、別々の支線がひとつの大きな線へと吸収されていく。


『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』


 それをなぞるように、『ファントム・メナス』も4つのクロス・カッティングで構築されている。


①大量のバトル・ドロイドと戦うジャー・ジャー・ビンクスらグンガン族

②スターファイターで空中戦を繰り広げるアナキン・スカイウォーカー

③ダース・モールとライトセーバーを交えるクワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービ

④ナブーの宮廷を奪還しようとするアミダラたち


 ①が地上戦、②が空中戦、③がチャンバラという構図は『ジェダイの帰還』と全く一緒。そしてアナキンが敵の司令船を破壊することでドロイドは機能停止となり、劣勢を強いられていたグンガン族は勝利を収める。別々のシークエンスが相互に作用する構成も踏襲されているのだ。


 クライマックスがクロス・カッティングで構築されている代表作といえば、なんといっても『ゴッドファーザー』(72)。コルレオーネ・ファミリーの新しいドンとなったマイケルは、子供の洗礼式当日に、対立するマフィアのボスたちを一斉に血祭りに上げていく。厳かな洗礼式と血生臭い暗殺のシークエンスを、フランシス・フォード・コッポラ監督が巧みな編集で描出していた。


 まだ幼いマイケルの子供を演じていたのは、フランシス・フォード・コッポラの愛娘ソフィア・コッポラ。そして彼女は、『ファントム・メナス』でアミダラの侍女サシェ役で出演も果たしている。ソフィアが自身の監督作『ヴァージン・スーサイズ』(99)の準備をしていたとき、ルーカスが新しい『スター・ウォーズ』を制作していると聞きつけ、父親に撮影の同行を懇願したのだ。するとルーカスは彼女にサーシェ役をオファーし、思いがけず出演することに。『スター・ウォーズ』と『ゴッドファーザー』という、アメリカを代表する2本の映画が不意に接続してしまった、感慨深いエピソードである。




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