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『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

(C)2024 Lucasfilm Ltd.

『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』16年ぶりに蘇った、新たなる神話

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サイレント映画のような快感



 ジョージ・ルーカスが『新たなる希望』を制作するにあたって、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが発表した研究本「千の顔を持つ英雄」を参考にしたことは、よく知られている。神話・伝説の典型的なテンプレートに、フランク・ハーバートの小説「デューン」、『フラッシュ・ゴードン(36)、『アラビアのロレンス』(62)、『隠し砦の三悪人』(58)といった映画のエッセンスを組み合わせることで、20世紀最大の神話は誕生したのだ。


 そして『ファントム・メナス』は、中盤に登場するポッドレースに、『ベン・ハー』(59)の影響が見て取れる。あの有名な、二輪戦車の競争シーン。ローマ帝国のコロッセオを思わせるデザインといい、抜きつ抜かれつのレース展開といい、ウィリアム・ワイラー監督の名作にヒントを得ていることは明白だろう(最後のセレブレーションも、『ベン・ハー』のパレードに酷似している)。映画史に燦然と輝く大スペクタクルを、ルーカスは『スター・ウォーズ』で蘇らせようとしたのだ。


『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』予告


 そしてこのポッドレースは、かつてプロのレーシングドライバーになることを夢見ていたジョージ・ルーカスの、カー・アクションに対する情熱が結実したシークエンスともいえる。アマチュアドライバーとしてレースに参加していた経験は『アメリカン・グラフィティ』にも描かれていたが、その発展系としてポッドレースが生まれたのだろう。


「レースは好きだよ。スピードが好きだし、私は映画作りに関してとても運動的な人間なんだ。映画の動きが何よりも好きなんだ。映画のような質感に惹かれるんだよ。視覚的イメージも好きだけど、最初は純粋な映画から観始めた。だから私の焦点はそこにある。現代の映画よりもサイレント映画に親近感を覚えるんだ」(*2)


 「サイレント映画に親近感を覚える」というルーカスの発言は、非常に興味深い。それは、断片的なコマの積み重ねによって運動イメージを生み出す、純粋なアクションへの希求と同義だからだ。彼がオリジナル・トリロジーで唯一監督を務めた『新たなる希望』を思い出してみよう。デス・スターから脱出したミレニアム・ファルコン号と、追ってきたTIEファイターとの空中戦。反乱軍のパイロットたちがXウイングに乗り込み、デス・スターに襲撃をしかける最終決戦(ヤヴィンの戦い)。そこにあるのはセリフの面白さではなく、純粋なアクションとしての高揚感。


 ジョージ・ルーカス自らプリクエルの演出を務めた効用のひとつは、サイレント映画のような快感を『スター・ウォーズ』に取り戻したことだ。




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