(c) 2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.
『ツイスターズ』28年ぶりに蘇った、スピルバーグ・トリビュート映画 ※注!ネタバレ含みます
西部劇的な記憶、ロードムービー的な記憶
『ツイスターズ』は、28年ぶりに蘇った『ツイスター』のリブート作品だが、直接的な因果関係は何もない。
例えば『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(22)のように、『ジュラシック・パーク』シリーズと『ジュラシック・ワールド』シリーズの登場人物を召喚して、新旧キャラクターが一堂に会するという方法もあっただろう。しかしながら、ケイトの白いタンクトップとパンツという格好がジョーと同じだとか、ビル・パクストンの息子ジェームズがカメオ出演しているだとか、両作品ともに『オズの魔法使』(39)をリファレンスしているだとか、細かな目配せはあるにせよ、完全に独立したストーリーとして設計されている。
むしろリー・アイザック・チョンにとって、『ツイスターズ』は幼少時の記憶が刻まれた作品だ。農場を始めるために、アーカンソー州のリンカーンという小さな町に引っ越してきた彼の一家は、そこで竜巻の脅威にさらされる。慌てて荷物を詰め込み、ラジオのニュースに耳を傾けながら、安全な場所まで車を走らせた。彼にとって、竜巻は身近な存在だったのである。
「私はアーカンソーの北西部で育ったんだ。『ツイスター』が公開されたとき、私たちはみんな竜巻に慣れ親しんでいた。竜巻に囲まれて育ったようなものだからね。あの映画の舞台はオクラホマで、私が住んでいたところからちょうど州境を越えたところにある。ある意味、地元の映画だと思っていたよ」(*3)
『ツイスターズ』(c) 2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.
暴れ牛や馬を乗りこなすロデオ、ウエスタンハットを目深に被ったカウボーイたち。『ツイスターズ』には、古き良きアメリカーナへのノスタルジーがある。リー・アイザック・チョンと撮影監督のダニエル・ミンデルは、過去作られた西部劇などを参考にしてルックを探り、最終的にコダックの35mmフィルムを採用した。同じく35mmを使っていた第1作へのオマージュであると同時に、カントリーサイドの美しい風景を切り取るにあたって、最も適切な方法だと判断したからだろう。
しかも撮影はスタジオではなく、そのほとんどがオクラホマの農村地帯で行われている。アメリカの原風景を、ロードムービーとして現出させる作品でもあるからだ。西部劇的な記憶と、ロードムービー的な記憶。本作には、アメリカ映画の歴史を喚起させる風景が広がっている。