(c) 2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.
『ツイスターズ』28年ぶりに蘇った、スピルバーグ・トリビュート映画 ※注!ネタバレ含みます
スピルバーグ・トリビュート映画
竜巻の猛威から逃げ込んだ映画館で、クラシック・ホラーの『フランケンシュタイン』(31)が上映されているのは非常に示唆的だ。かつてユニバーサル映画では、ドラキュラ、透明人間、狼男、半魚人などのモンスターを扱った「ユニバーサル・モンスターズ」が数多く作られていた。リー・アイザック・チョンは竜巻を巨大なモンスターと見なして、その系譜を受け継ぐ。『ツイスター』では、ドライブインシアターで『シャイニング』(80)を鑑賞するシークエンスが挿入されていたが、『ツイスターズ』ではより怪物性が強調されている。
巨大なモンスターとの戦い。それは、製作総指揮を務めているスティーヴン・スピルバーグの専売特許だ。『激突!』(71)のタンクローラー、『ジョーズ』(75)のホオジロザメ、『ジュラシック・パーク』のティラノサウルス、『宇宙戦争』(05)のトライポッド。彼のフィルモグラフィーは、モンスター映画のオンパレードである。そしてスピルバーグの代名詞といえば、人々が空を見上げるカット。彼はあらゆる映画で、宇宙船を、戦闘機を、恐竜を見上げてきた。竜巻というモンスターを見上げるカットが頻出する『ツイスターズ』は、新しいスピルバーグ・トリビュート映画なのである。
『ツイスターズ』(c) 2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.
特に筆者が最も類似性を感じたのは、『ジョーズ』。①メインキャラクターが3人であること、②モンスターに敵意ではなく好奇心を抱いていること、③主人公がニューヨークからやってきたという設定、④モンスター目当てにアメリカ中から人が集まってくること、⑤モンスターに秘密兵器を“発射”して倒すラストの展開。リー・アイザック・チョン自身も、『ジョーズ』を参考にしたことを率直に認めている。
「あの映画では、3人の男たちが自然の象徴であるサメに立ち向かう。今回スティーブン・スピルバーグと一緒に仕事をして、彼がどうやって緊張感を高めたかとか、『ジョーズ』について話せて嬉しかった。サメを登場させずに、どのように多くの見せ場を作ったのかとかね。その要素はこの映画にもあって、トルネードを見せるのを何度も控えているんだ」(*4)
さらに筆者は、最近作られたある作品との類似も指摘しておきたい。ジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』(22)だ。アメリカの荒野を舞台に、突如現れた未確認飛行物体と対決する物語。『NOPE/ノープ』もまた、『ジョーズ』、『宇宙戦争』、『未知との遭遇』(77)のエッセンスをブチ込んだ、紛うことなきスピルバーグ・トリビュート映画だ。しかも、この映画に登場する家電量販店従業員役のブランドン・ペレアは『ツイスターズ』でタイラーの仲間ブーンを演じているし、ジュープ役のスティーヴン・ユァンは『ミナリ』で主人公ジェイコブを演じている。
西部劇、ロードムービー、スピルバーグ映画的なるもの(&スクリューボール・コメディのグルーヴ)をふんだんにパッキングした『ツイスターズ』。そんな映画、絶対に面白いに決まっている。思えば、竜巻によって半壊状態となった映画館は、決して全壊にはならなかった。サブスク全盛の時代にあっても、劇場体験型のスペクタクル映画はまだ死んではいない。リー・アイザック・チョンは映画が本来持っていた原初的な力を、『ツイスターズ』で呼び起こしたのだ。
(*1) https://www.vulture.com/article/jan-de-bont-defends-the-practical-effects-in-twister.html
(*2) https://dam.gettyimages.com/viewer/universal/vth74xcs5xvkm8qrt7bpj39
文: 竹島ルイ
映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。
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配給:ワーナー・ブラザース映画
(c) 2024 UNIVERSAL STUDIOS,WARNER BROS.ENT.& AMBLIN ENTERTAINMENT,INC.