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『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ

(c)Photofest / Getty Images

『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ

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ゲームで世界の俳優と繋がるケヴィン・ベーコンの原点



 そして『フットルース』の成功を導いた立役者が、反逆の主人公レン・マコーミックにぴたりとハマったケヴィン・ベーコン。初期段階でトム・クルーズやロブ・ロウ、ジョン・トラヴォルタの名も挙がったが、プロデューサーのダニエル・メルニックは『ダイナー』(82)のベーコンの演技を観て、レン役の最終候補4人に彼を選んだ。しかしベーコンはダンスのキャリアがなかったため一度は候補から外れる。その後、キャスティングが難航するなか、メルニックのスタッフがベーコンとディスコへ行き、彼のダンスを間近で見たことで、レン役に決まったという。


 ケヴィン・ベーコンはオリンピックの体操コーチから基礎トレーニングを受け、振付師の下で2ヶ月間、ジャズダンスやモダンダンスを特訓した。レンのダンスがやや器械体操っぽいのは、このトレーニングの賜物である。レンが自身の怒りをダンスにぶつける有名な倉庫のシーンで、彼のダンスダブルをメインで務めたダンサーのピーター・トラムは、『フラッシュダンス』でのジェニファー・ビールスのダンスダブル、マリーン・ジャハンの夫(当時)だった。


 ベーコンは撮影が始まってから、ロケ地であるユタ州のペイソン高校に校長の計らいで一日だけ転校生として潜入。当時ベーコンは24歳だったが、周囲の学生は彼の年齢を疑わなかったという。ただ映画のレンの髪型とファッションだけは保守的な町の若者には奇異に映ったようだ。事情が明らかになると、学生たちは協力的になった。2024年、『フットルース』40周年を記念し、ベーコンはペイソン高を訪れ、プロムに出席した。



『フットルース』(c)Photofest / Getty Images


 ケヴィン・ベーコンはその後、ハリウッドで着実にキャリアを築いたわけだが、どちらかと言えば名バイプレイヤーという存在で現在まで出演作が途切れない。B級映画から大作まで幅広く活躍したことで、「ケヴィン・ベーコン・ゲーム」という遊びでも有名になった(ベーコンと共演した俳優に「1」、その俳優と共演した俳優に「2」という数字を与えると、世界中のほぼすべての俳優が「3」以内に収まるというゲーム)。これだけのキャリアでアカデミー賞ノミネートに無縁というのも意外だが、栄誉ではなく作品で映画ファンをいつまでも楽しませ続けるのが、俳優の本領だとベーコンは示しているようでもあり、そんな愛すべき俳優の原点が『フットルース』なのである。


 その他のキャストでは、後に「セックス・アンド・ザ・シティ」(98〜)のキャリー役で一世を風靡するサラ・ジェシカ・パーカーが、レンの同級生ラスティ役で初々しい魅力をみせている。幼少時からクラシックバレエを習い、ブロードウェイのミュージカル「アニー」で主役を演じていたパーカーだが、『フットルース』では残念ながらダンスの才能を生かすシーンは限定的だった。


 『フットルース』は1998年にブロードウェイでミュージカル化。トニー賞4部門にノミネート。2011年に作られたリメイク映画『フットルース 夢に向かって』では「フットルース」や「ヒーロー」などのナンバーが別のアーティストにカバーされ、再び使われた。残念ながら日本では劇場公開されず、知る人ぞ知るリメイク版になってしまったが、だからこそオリジナル版が唯一無二の輝きを今も放っている。


参考文献:『フットルース』劇場パンフレット



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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