1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フットルース
  4. 『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ
『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ

(c)Photofest / Getty Images

『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ

PAGES


ロックとダンスが禁止という現実のエピソードから生まれた物語



 『フットルース』の舞台となったのはアメリカ中西部、ユタ州のボーモントという町。シカゴからの転校生レン・マコーミックが、ある事故がきっかけで禁止されたダンスやロックを、高校の卒業パーティーで復活させようと奮闘する物語。「ロックが禁止」とはちょっと極端な設定だが、脚本のディーン・ピッチフォードはオクラホマ州で実際に起こった出来事から着想を得た。劇中のセリフからも、「メン・アット・ワーク」が労働者、「ポリス」が警察と解釈されるなど、ボーモントの人たちがロックをまったく知らないことが伝わってくる。


 そのボーモントは架空の町。撮影はユタ州で行われたが、ロックやダンスを取り入れたドラマは、ロケ地の人々から反感も買ったとプロデューサーのダニエル・メルニックは語っている。1980年代でも、アメリカ中西部は超保守的な空気に支配されていたのだ。映画としては、保守的な大人vs.時代を切り開く若者という構図がわかりやすく、だからこそ多くの観客の支持を得たのだろう。



『フットルース』(c)Photofest / Getty Images


 ハーバート・ロス監督の演出はドラマパートはオーソドックスであり、その分、曲が流れるシーンのインパクトを際立たせることになった。もともとロスは、ブロードウェイのミュージカルやアメリカン・バレエ・シアターの振付師として名を馳せ、映画界に進出。映画のミュージカルシーンの演出・振付から監督となり、ミュージカル映画『ファニー・レディ』(75)や、クラシックバレエの世界が舞台でアカデミー賞監督賞ノミネートの『愛と喝采の日々』(77)、世界的ダンサーを主人公にした『ニジンスキー』(80)などを手がけてきた。


 ダンスをテーマにした『フットルース』にロスは適任だったが、別作品との兼ね合いで一度は降板。その代役で呼ばれたのがマイケル・チミノだった。チミノといえば、『天国の門』(80)での製作費超過による大赤字でユナイテッド・アーティスツを倒産に追い込んだばかり。『フットルース』のパラマウントは彼の才能を信じたが、例によってチミノは脚本の書き直しなど無理難題を言い出したために解雇。そうこうするうちにハーバート・ロスのスケジュールが調整できた。もしチミノが撮っていたら、まったく異質の『フットルース』が完成されたに違いない。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フットルース
  4. 『フットルース』時代を反映して映画とサウンドトラックが奇跡的マッチ