主人公が置かれた状況は、あのアクション映画に似ている!?
リーチのこれまでの監督作を振り返っても明らかだが、ユーモアの感覚は彼の有効な武器であり、コメディの要素を多分に含んでいる。加えて、本作にはサスペンスという娯楽味も含まれている。序盤が落ち着くと、コルトはもうひとつの仕事をゲイルからあたえられる。それはシドニーで行方不明となったトムの行方を探すこと。なにしろトムは大スターだから、現場にいなければ撮影が遅れ、製作費の超過も免れない。かくしてトムは夜のシドニーの街に出向き、いかがわしい仲間とつるんでいたというトムの行方を探る。ここから映画は犯罪サスペンスの濃度を増していく。
トムの行方を追ってたどり着いたホテルのバスルームで、死体を発見してしまったことから殺人の濡れ衣を着せられ、指名手配されてしまうコルト。こうなると、もはや映画撮影どころではない。仕事仲間で親友でもあるスタント・コーディネーターのダンに協力を頼み、コルトは無実を証明するため、真相追求に乗り出す。
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ともにスタントマンであるダンとコルトのやりとりはユーモラスで、たがいに映画好きらしくセリフに引用が頻繁に飛び出す。たとえば “お前が『逃亡者』(93)のハリソン・フォードなら、追手が来る頃だ”と、ダンが同作で殺人の濡れ衣を着せられた主人公を引き合いに出したり。ダンがあるアクション映画のセリフを言い、それをコルトに当てさせるやりとりもあり、彼らのアクション映画への愛情をうかがわせる。