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『バービー』狂騒的な矛盾を生きる、内なる少女の歩み方

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『バービー』狂騒的な矛盾を生きる、内なる少女の歩み方

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『バービー』あらすじ

すべてが完璧で今日も明日も明後日も《夢》のような毎日が続くバービーランド!バービーとボーイフレンド?のケンが連日繰り広げるのはパーティー、ドライブ、サーフィン。しかし、ある日突然バービーの身体に異変が!原因を探るために人間の世界へ行く2人。しかし、そこはバービーランドとはすべて勝手が違う現実の世界、行く先々で大騒動を巻き起こすことに一!?


Index


バービーという矛盾



「バービーは、常に女性には選択肢があるということを象徴していた」(ルース・ハンドラー:バービーの発明者)*1


 赤ちゃんの人形と戯れる少女たちの前に、自信満々の巨大なバービードールが現れる。少女たちの反乱が起こる。怒れる少女たち。バービードールの絶対的なインパクトに衝撃を受けた少女たちは、手にしていた赤ちゃん人形を次々と破壊する。スタンリー・キューブリック監督による不朽の名作『2001年宇宙の旅』(68)のパロディとして描かれる『バービー』(23)の冒頭シーンには、本作の提示する相反する感情が的確に表わされている。この冒頭シーンは、バービードールの誕生が当時ポピュラーだった赤ちゃんの人形と取って代わったことを表わす描写に留まらない。バービードールの誕生は新たな創造であるのと同時に破壊でもある。先進的であるのと同時に後進的もある。憧れであるのと同時に劣等感の元凶でもある。バービードールに対する賞賛と嫌悪の歴史、その誕生が壮大なバカバカしさで描かれている。


 ニール・アームストロングが月面に着陸する4年前に、バービーは宇宙に向かっている。バービーは1992年以来毎回大統領選挙に立候補している。バービーは女性がローンを組むことが一般的ではなかった1962年に、自分の家“ドリームハウス”を購入している。1968年に登場するクリスティという黒人のバービードールは、アメリカ版ヴォーグ誌が初めて黒人のモデルを表紙にする1974年より前の話だ。バービーの就いた職業は、これまでに250種類を超えている。バービーはその誕生以来、少女たちが夢見る大人のロールモデルの役割を、先頭に立って牽引してきた存在といえる。



『バービー』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.


 一方、白人のブロンドヘアで、あり得ないほど引き締まったウエストと細すぎる脚の持ち主のバービー(マーゴット・ロビー)は、本作の少女サーシャ(アリアナ・グリーンブラッド)が指摘するように、「フェミニズムを後退させた」元凶であるという批判を受けてきた。1972年には性差別的で物質主義的だという主張の元、抗議運動も起きている。バービーのような外見になってケンのような男性と付き合うことは、必ずしも“大人のロールモデル”ではない。その意見は圧倒的に正しい。本作のキャスト、イッサ・レイが言うように、バービーは全能感のある神様を演じる機会を子供たちに与えてくれるのと同時に、「幼い頃に人種を意識させられる」ものでもある。


 しかしバービードールへの批判に対するアンサーの一例として、たとえば「プリンセス・ダイアリー」の著者メグ・キャボットは、バービーのルックスは大きな問題ではなく、私たちがバービーのように何にでもなれると教えてくれたことこそが重要だと擁護する意見もある。


 シアーシャ・ローナンとのコンビで『レディ・バード』(17)や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)といった、新時代の決定的な映画を撮ってきたグレタ・ガーウィグ監督による本作は、バービードールに対する進歩性と退歩性、賞賛と嫌悪、どちらかを完全に否定するのではなく、コインの裏表、両義的なもの、矛盾として描いている。グレタ・ガーウィグはバービーの矛盾、私たちの世界の矛盾に愛情を注いでいる。




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