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『ラ・ラ・ランド』甘い愛、苦い現実、取捨と選択――儚き「夢追い人の彷徨」

『ラ・ラ・ランド』甘い愛、苦い現実、取捨と選択――儚き「夢追い人の彷徨」


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雌伏の年月を経て、企画が実現



娯楽の都で出会った、駆け出しの女優と挫折に佇む音楽家。

夢追い人が育んだ愛は、甘くほろ苦く、現実に溶けていく。


 2017年2月の日本公開から、はや3年を迎える『ラ・ラ・ランド』(16)。新世代におけるお洒落映画やミュージカル映画の代表格として、揺るぎない地位を築いたエポック・メイキングな傑作だ。概算3,000万ドルの製作費に対し、約15倍となる4億4,600万ドル超の世界興行収入を記録。日本でも興収44億円以上のヒットを飛ばした。


 成績だけではなく、受賞歴も実に華やか。全世界の映画賞で約300ノミネート、250近くの受賞を刻んだ。そのうち、第89回アカデミー賞では監督賞、主演女優賞ほか6部門で受賞。同賞13部門14ノミネートという数字は、『イヴの総て』(50)、『タイタニック』(97)に並ぶ史上最多記録だという。授賞式では、『ムーンライト』(16)との「作品賞の誤発表」という世紀の大ハプニングも発生した。



 観客だけでなく業界人からの支持も厚く、トム・ハンクスは自身の主演作『ハドソン川の奇跡』(16)の会見中に本作を激賞。「想像もできないほど、本当に新しい」と称え、オリジナル企画が通りづらいなか、しかも既存曲を使わないミュージカルというリスクの高いチャレンジを成し遂げた製作陣にエールを送った。


 ハンクスの指摘通り、本作は企画開発に長い時間がかかっており、デイミアン・チャゼル監督が脚本を書き上げたのは2010年。彼の出世作『セッション』(14)よりも前にさかのぼる。


 自身もミュージシャン志望だったチャゼル監督にとって念願の企画だったが、出資に手を上げるスタジオはほぼなく、ようやく企画の実現にこぎつけたものの「主人公の職業をジャズピアニストからロック歌手に」「ラストの変更」など、多くの改変を要求され、企画は凍結。その後、『セッション』の成功によってチャゼル監督が注目を浴びたことで新たなスタジオが名乗りを上げ、満足いく形で製作が動き出したそうだ。


 ちなみに、本作に出資した製作会社の1つ、「ブラック・レーベル・メディア」の名前は、この機会にぜひ覚えていただきたい。本作をはじめ『はじまりのうた』(14)、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15)、『ボーダーライン』シリーズ(15~18)などに携わっており、相当の目利きといえる。


 主人公となる女優ミアとジャズピアニストのセブのキャスティングにも紆余曲折あり、当初は『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソンと『セッション』のマイルズ・テラーで進められていたが、ワトソンが『美女と野獣』(17)に出演するため降板。エマ・ストーンとライアン・ゴズリングに白羽の矢が立ったという。




 ここには興味深いエピソードがあり、ゴズリングはワトソンと反対に『美女と野獣』のオファーを断り、本作に出演したそう。ストーンは、2014年のブロードウェイ初出演時に観劇したチャゼル監督からオファーを受け、熱意に共鳴して出演を快諾した。


 2人と面談したチャゼル監督は相性の良さを感じたというが、それもそのはず、ゴズリングとストーンは『ラブ・アゲイン』(11)、『L.A. ギャング ストーリー』(13)でも共演しており、本作で3回目のコラボレーションとなる。


 余談だが、ワトソンとストーン、2人のエマの“交換”は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)でも起こり、当初はストーンが出演するはずだったが『女王陛下のお気に入り』(18)に伴うスケジュールの都合で断念。ワトソンが出演し、高い評価を受けた。なんだかんだで、どちらもオスカー受賞作に絡んでいるから恐れ入る。



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