『フォールガイ』あらすじ
大ケガを負い、一線を退いていたスタントマン=コルト(ライアン・ゴズリング)。愛する元カノ・ジョディ(エミリー・ブラント)の初監督作で久々に現場復帰するが、主演が突如失踪してしまう!行方不明のスターの謎を追ううちに、コルトは危険な陰謀に巻き込まれることに…。彼は己のスタントスキルで、この危機を突破できるのか!?
ハリウッドのアクション映画シーンにおいて、今もっとも重要な存在といえるのはチャド・スタエルスキとデヴィッド・リーチのふたりではないだろうか。『ジョン・ウィック』(14)で共同監督を務めて成功を収めた彼らは、その後、それぞれの道を歩み、アクション映画に新風を吹き込んできた。スタエルスキは『ジョン・ウィック』の続編3本を単独監督し、シリーズをモンスターヒット作に押し上げる。一方、リーチは『アトミック・ブロンド』(17)、『デッドプール2』(18)、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(19)、『ブレット・トレイン』(22)と、こちらもスケールの大きなアクションを連打し、観客を熱狂させている。
そもそも彼らのハリウッドでのキャリアは、スタントマンとして始まった。意気投合した彼らは手を組み、“87イレブン”というスタントに特化したスタジオを設立。これを通じて『エクスペンダブルズ』シリーズなどのヒット作のスタントに関わって実績を築き、それが『ジョン・ウィック』での監督デビューに繋がった。現在はそれぞれに活躍している彼らだが、スタントの見せ方にこだわり、迫力あふれるアクションを生み出す姿勢は共通している。
スタエルスキに関してはまた別の機会に書かせていただくとして、本稿の主役はデヴィッド・リーチの新作『フォールガイ』(24)。これはスタントマンの世界を描いたアクションエンタテインメント。すなわち、リーチのよく知っている分野の物語なのだ。元ネタは1980年代の人気TVシリーズ『俺たち賞金稼ぎ!!フォールガイ』で、主人公の名前コルト・シーバースも一緒だが、そんな予備知識がなくとも楽しめるどころか、これが文句なしの快作なのだ。そんな『フォールガイ』の魅力について語っていこう。
『フォールガイ』予告
Index
- 旬のスターたちが織り成すラブコメ的妙味
- 主人公が置かれた状況は、あのアクション映画に似ている!?
- ギネス記録を破る! スタントマンのガッツに火がついた!!
- 陽の当たらないところでプロであり続ける映画人への賛歌
旬のスターたちが織り成すラブコメ的妙味
“フォールガイ(=落下するヤツ)”とはスタントマンを指す隠語。主人公コルトはハリウッドのアクションスター、トム・ライダーのスタントダブルを務める腕利きの“フォールガイ”だ。しかし、落下のスタントの失敗により肉体だけでなく心にも深い傷を負い、映画界から姿を消す。18か月後、そんな彼のもとに旧知のプロデューサーから、トムの最新主演作『メタルストーム』への参加要請が。最初は断ったコルトだったが、監督を務めるのが18か月前に捨てた格好となった恋人ジョディであることから仕事を受け、ロケ地のオーストラリア、シドニーに飛ぶ……。序盤の物語は、ざっとこんな感じだ。
主人公コルトにふんするのはライアン・ゴズリング、ヒロイン、ジョディにはエミリー・ブラント。前者は『バービー』(23)で、後者は『オッペンハイマー』(23)で、アカデミー賞にノミネートされたのも記憶に新しい。人気と実力を兼ね備えた、脂ののっているスターの共演は、それだけで魅力を放つ。
『フォールガイ』©2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
物語の根底にラブストーリーがあるのは、序盤のあらすじからも明らか。ヒロイン、ジョディは映画の始まりでは映画のカメラ・オペレーターの仕事をしており、同じ現場で働くコルトとも仲睦まじい。しかし、スタントの失敗に傷ついたコルトは映画界からだけでなく、彼女の前からも何も言わず姿を消した。ジョディはこの失恋をバネにして、『メタルストーム』で念願だった監督デビューのチャンスをつかむ。しかし、コルトはまだジョディを愛しており、この撮影に参加したことから話はややこしくなる。焼け木杭には火がついたというべきか。勝手に消えて勝手に現われたコルトに対して、ジョディはまだ怒っており、過酷なスタントを次々と押し付ける。そんなラブコメ的な展開が楽しい。