雑誌記事となった実話をベースにした物語
なんと絵空事なストーリーか、と思われるかもしれない。しかしこれは2013年にWIRED誌に掲載された記事が全ての発端となっている。子供たちをめぐる現状を変えたいと願う一人の教師が「子供たちの自発性を生かした学習方法」についての動画と出会い、それを見よう見まねで実践したところ、多くの生徒が学ぶ楽しさや喜びに目覚め、これまで国内最低レベルだった学力テストの成績が目を見張るほどに上昇したーーというのである。
この記事の内容は今でもネットで読めるので、映画に興味を持った方はぜひこちらもチェックしていただきたい。2013年の記事ということもあり、パソコンやネットの普及(情報革命)がもたらす可能性の論点はすでに過去のものとして映るかもしれないが、それでも他人から押し付けられた知識よりも、自ら「知りたい!」と欲して独力で辿り着き、習得した知識の方が遥かに意義深く刻まれるという真理は、10年前も今も変わらない普遍的なものに違いない。
『型破りな教室』©Pantelion 2.0, LLC
そして過酷な環境で暮らす子供らにとって、自立型の学びはより重要性を増す。自ら課題を設定し、それを解き明かし、より良い明日を掴み取ろうと模索する姿勢は、それそのものが一つの生き方の羅針盤となりうるからだ。
映画『型破りな教室』は、原作記事をそのまま脚本に落とし込んだような内容にはなっていない。彼らが何を成し遂げたのかという結果だけに囚われすぎることなく、フアレス先生と生徒たちの間で形成される信頼関係や絆、そして何よりも、授業革命によって子供たちの瞳が好奇心や意欲で満ち溢れ、どんどん輝きを増していく過程にこそ重きを置いて、ストーリーを膨らませている。
その上で、作り手たちはさらに入念なリサーチを重ねて題材を掘り下げ、リアリティを構築し、先生と生徒とが化学反応を巻き起こす基本軸をより重厚で訴求力を持つものへと昇華させていったのである。