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『リトル・ミス・サンシャイン』まるで舞踏団のように息の合った家族は、いかに生み出されたか?

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『リトル・ミス・サンシャイン』まるで舞踏団のように息の合った家族は、いかに生み出されたか?

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知名度に囚われず、こだわり抜いたキャスティング



 最初の大きな要となったのがキャスティングである。二人がまず着手したのがオリーヴ役の少女にふさわしい子役を探し出すこと。アメリカやイギリス、カナダはもとより、オーストラリアやニュージーランドといったあらゆる英語圏の国々でオーディションが展開され、最終的にはニューヨークで一人の少女に白羽の矢が立った。彼女こそアビゲイル・ブレスリン。当時はまだ6歳くらい。それでも3歳頃からのCMなどへの出演歴があり、5歳の頃にはかの有名な『サイン』(02)に出演しているので、この業界では夫婦監督よりもずっとずっと先輩だ。


 すべての命運はこのキャスティングにかかっている。それは誰もが承知のことだった。だがそれにしても、まさかこれほどユニークな女の子が抜擢されるとは、関係者もびっくりだったはず。アビーはいわゆるステレオタイプの可愛らしさからは大きく逸脱した女の子。とりわけ映画の中ではメガネ&ファット・スーツによってお腹ポッコリの体型を作り出してはいるものの、これとは対照的に、内側から溢れ出るキュートかつエネルギッシュな魅力によって、今にも空中分解しそうな家族をギリギリのところでしっかりと繋ぎ止める。今になってみて思えば、これほど打ってつけのキャスティングはない!ってほどだ。



『リトル・ミス・サンシャイン』(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 また、オリーヴのお兄ちゃん役にはポール・ダノが選ばれた。監督曰く「彼はしっかりしたプロの俳優で、とても勘がいい」。役作りの一環で本当に“無言の行”を実践して感覚を掴んだというし、ポケットからサッとメモを取り出して筆談するという一連の動作も、撮影の頃にはすっかり体に馴染んでいたそうな。


 パパ役のグレッグ・キニアやママ役のトニ・コレット、おじいちゃん役のアラン・アーキンは、言うまでもなく映画業界ではすっかり名の通った存在だった(思えば、コレットも、ブレスリンも、M・ナイト・シャマラン監督作でブレイクしたという不思議な共通点がある)。一方、この頃、まだ知名度の劣る存在だったのが叔父さん役のスティーヴ・カレルである。


 実はこの役、もともとはビル・マーレイを念頭に置きながら執筆されたそうだが、おそらくうまく事が運ばなかったのだろう、スタジオ側は次なる候補としてロビン・ウィリアムズを推してきたという。だが監督たちはカレルと話をして「この男なら、同じ価値観を共有できる」と判断。そのおかしみと哀しみを同時に表現できる素晴らしさは映画を見れば一目瞭然だが、それ以上に、この映画の撮影から公開までの間にカレルは、『40歳の童貞男』(05)やTVシリーズ「The Office」(05〜13)の大成功を経て一躍時の人へと躍り出てしまった。こうやって揃った6つの手持ちの絵札はもはや無敵。夫婦監督はあらゆる意味でこの賭けに大勝ちしたのだ。



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