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『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます

© LB 2023 Limited

『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます

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ひと粒で二度おいしい、ジャンル横断の魅力



 2つ目の魅力は、本作が持つもう一つの側面です。本作は、共通の目的に向かって全力で協力するプロたちを描く、いわばプロジェクトX的な側面を持っています。


中盤、映画の視点は主人公から、彼の仲間たちへ切り替わります(ウディ・ハレルソンの観客へ向ける視線が印象的)。海中の小型艇のダイバー、海上の船員、ここから映画は古典的とも言えるほど実直な演出で、立ち塞がる難関と、プロたちの奔走をスリリングに描いていきます。ここからも危機また危機。主人公に残された時間が刻一刻と減っていく中、彼らは「失敗したら死ぬ」という一発勝負に挑んでいくのです。


 最初に書いたことの繰り返しになりますが、やっていること自体は地味な行為が多いです。船を固定するのはまだしも、サーバーをリセットしたり、一世を風靡した電流イライラ棒みたいなクレーンの操作だったり。しかし、それらが全てきちんと見せ場になっているのです。プロたちの奮闘という意味では往年の名作『アポロ13』(95)的な雰囲気もありつつ、「一手でも間違ったら死ぬ」状況で頑張るのは『キューブ』(97)などのデスゲーム/ソリッドシチュエーションスリラーの血も感じます。



『ラスト・ブレス』© LB 2023 Limited


 ド根性ファイト一発映画と、死のプロジェクトX的な映画を上手く繋げている。ひと粒で二度おいしい。この似て非なるジャンルを上手く繋げている点も、本作の魅力と言っていいでしょう。


 そして映画は、無事に主人公の生還で幕を閉じます。ここで映画は集団劇から一転、再び主人公の視点に戻ります。そして彼は死にかけたにも関わらず、再びダイバーとして生きることを選ぶのです。こうして映画は再び元のジャンルへ戻ります。死地を潜り抜けたあと、何か人生について教訓を得て帰ってくる。これもファイト一発映画の特徴なのですから。




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