1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ラスト・ブレス
  4. 『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます
『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます

© LB 2023 Limited

『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます

PAGES


※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


『ラスト・ブレス』あらすじ

潜水支援船のタロス号が北海でガス・パイプラインの補修を行うため、スコットランドのアバディーン港から出航した。ところがベテランのダンカン(ウディ・ハレルソン)、プロ意識の強いデイヴ(シム・リウ)、若手のクリス(フィン・コール)という3人の飽和潜水士が、水深91メートルの海底で作業を行っている最中、タロス号のコンピュータ・システムが異常をきたす非常事態が発生。制御不能となったタロス号が荒波に流されたことで、命綱が切れたクリスは深海に投げ出されてしまう。クリスの潜水服に装備された緊急ボンベの酸素は、わずか10分しかもたない。海底の潜水ベルにとどまったダンカンとデイヴ、タロス号の乗組員はあらゆる手を尽くしてクリスの救助を試みるが、それはあまりにも絶望的な時間との闘いだった…。


Index


ジャンル:ファイト一発映画



 2025年9月26日より公開が始まった『ラスト・ブレス』(25)はファイト一発映画の新たな傑作です。観終わったとき、私の頭の中で、おぼろげながら懐かしい映像が浮かんできました。崖に張り付いた絶叫するケイン・コスギです。何もかもが懐かしい……。


 最初に断っておきますが、本作は決して超大作ではありませんし、超有名スターが出ているわけでも、ド派手なシーンがあるわけでもありません。しかし堅実な造りによって、手に汗握る一級の実録スリラーに仕上がっています。同時に、この10年で進化と発展を遂げたファイト一発映画の最新形であると思うわけです。


 なお「ファイト一発映画」とは、私が勝手に呼んでいるジャンルで、簡単に言うと「どう考えても詰んでいる人間が、気合いと奇策で生還!」するお話です。もちろん決死のサバイバルを描く作品は過去にもありましたが、その中の特定のアプローチの映画が2010年代前後から急速に進化し、今や一つのジャンルとなっているように思うのです。


 『ラスト・ブレス』は、そんなファイト一発映画の系譜にあります。では具体的にジャンル「ファイト一発映画」に属する作品は何か?その魅力の根源とは?今回はその最新形である同作の魅力をネタバレありで2点ほど語りつつ、ジャンル全体についても書いていきたいと思います。



『ラスト・ブレス』© LB 2023 Limited


ファイト一発映画の条件



 まず、ジャンル「ファイト一発映画」とは、具体的にどういう映画なのかを説明させてください。私の中では、以下のような条件が重なる作品だと私は考えています。


其の一、主人公が耳を疑うような絶体絶命の状況に置かれる

其の二、事故に遭っている模様をなるべくリアルタイムで描く

其の三、主人公は肉体を酷使して、ガッツと工夫で問題に対処する

其の四、生還したあと、主人公は何らかの人生の教訓を得る


 だいたいこの4つを満たすと、その映画はファイト一発映画になります。冷静に思い出してみてください。なんだか2010年あたりから、こういう映画が増えたような気がしませんか?また、こういった映画は、たとえば『八甲田山』(77)や『生きてこそ』(93)といった映画とは、ちょっとジャンルが違うように思いませんか?


 このジャンルが発展したのは、技術的な面が大きいでしょう。撮影機材の小型化や、特殊効果の発展によって、それまでリアリティを持って描けなかった極限状況が、まるで本物のように映せるようになりました。『ラスト・ブレス』も同様です。そして、そのリアリティ重視のアプローチが、この作品の第一の魅力でもあります。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ラスト・ブレス
  4. 『ラスト・ブレス』ファイト一発サバイバル映画の新たな快作 ※注!ネタバレ含みます