2018.10.11
「4人目のデヴィッド」になれるか
1980年代、強烈な作家性と独特の映像センスでカルト的人気を博した2人の鬼才、デヴィッド・クローネンバーグとデヴィッド・リンチは「2人のデヴィッド」と称された。ちなみに、クローネンバーグはカンヌで複数回受賞したほか審査委員長を務めたことがあり、リンチも『ワイルド・アット・ハート』(90)でパルムドールを受賞するなど、彼らもまた「カンヌに愛される監督」だ。
1990年代に入ると、『セブン』(95)、『ファイト・クラブ』(99)の成功でメジャー監督の仲間入りを果たしたデヴィッド・フィンチャーを含めて、「3人のデヴィッド」という呼称も使われるようになった。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』© 2017 Under the LL Sea, LLC
彼らのような巨匠に比べたら、今年ようやく通算3作目のミッチェルはまだ駆け出しのような存在だ。それでも、既存のジャンルを独創的なアイデアでアップデートする才能は、大物になる予感に満ち、それがまたカンヌに愛される理由でもあるのだろう。「4人目のデヴィッド」になる期待も高まるが、ミッチェルは今後も自分のペースで映画を作り続けるはずだ。あせらず急がず、緩やかに進む自作の登場人物のように。
フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。
アンダー・ザ・シルバーレイク
10月13日(土)新宿バルト9他 全国順次ロードショー
公式サイト: http://gaga.ne.jp/underthesilverlake
© 2017 Under the LL Sea, LLC
※2018年10月記事掲載時の情報です。