2018.11.16
イタリアからやってきたステファノ・ソッリマという逸材
かくしてソッリマ監督への周囲の期待はマイナスから始まったと言っていい。だが、単刀直入に(筆者の所見で)言うと、続編『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は本当にすごい映画だった。とてつもなくパワフルで、エモーショナル。劇場に足を運んだ誰もが、腹の底から感情のマグマが噴き出してくるような激震を感じるはずだ。
かつて、大方の反応と同じく「ステファノ?だれ?」と恥ずかしげもなく口にしていた筆者は、脳天をカチ割られたみたいな衝撃を受け、すぐさまこのステファノ・ソッリマが何者なのか知りたい衝動に駆られた。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(c)2018 SO
プロフィールを紐解くと、そもそも彼の血筋からしてスバ抜けており、なんと父親は『復讐のガンマン』(66)や『狼の挽歌』(70)で知られるセルジオ・ソッリマなのだという。66年、ローマ生まれのステファノは、まさにこの業界に足を踏み入れることを運命づけられていたかのように90年代の終わりからTVドラマの演出などに携わるようになる。そんな彼の名を一躍有名にしたのが、”ACAB”(12)という警察アクション。モスクワ国際映画祭で国際批評家連盟賞などに輝いた話題作だ。実はこれ、シネマート新宿などで開催中の「のむコレ2018」にて『バスターズ』という邦題での上映が決定している。気になる方は是非スクリーンで鑑賞できるこの貴重な機会を逃さないでほしい。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(c)2018 SO
その後、ソッリマはTVシリーズ『ゴモラ』にて犯罪が津々浦々まで浸透した裏社会の実態を描き出し、さらに映画『暗黒街』(15)では政治と裏社会が密接につながり、やがて全てがトルネード化して転落していく様を群像劇タッチで描き出して賞賛を浴びた。いずれも正義や悪といったありきたりな線引きではなく、圧倒的な状況の中で揺れ動く人間の本性をあぶり出そうとする力作ばかり。これらの軌跡を見つめると、彼がいかに『ボーダーライン』続編監督にふさわしい逸材であったかが濃密なまでに伺えるのである。