2018.11.16
Index
- あの衝撃作が、3年ぶりに新章へと突入
- イタリアからやってきたステファノ・ソッリマという逸材
- 暗黒世界を描き続けてきた、並ぶ者のいない鬼才
- 名匠ソッリマがこのプロジェクトに感じた運命的なもの
- 監督の独自性を存分に解放させる製作スタイル
あの衝撃作が、3年ぶりに新章へと突入
近年、メキシコとアメリカの国境には、世界中の注目が集まっている。その大きなきっかけを作ったのはやはりドナルド・J・トランプが公約に掲げる「国境の壁建設」の主張だろうが、2015年公開のサスペンス・アクション作『ボーダーライン』(原題:Sicario)はトランプが大統領選に勝利する一年以上も前にこの地にフォーカスし、ドラッグ密輸をめぐる各勢力のうごめきをダイナミックかつスリリングに描き出してきた。その意味でも監督を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴと、脚本家テイラー・シェリダンの“時代の読み方”には怖いほどの鋭さが見て取れる。
あれから3年、ついにその続編がベールを脱ぐーー。とはいえ、ここまでの道のりは決して順調なものではなかった。堅実な興行的ヒットと高評価に恵まれた前作は、米公開からひと月も経たないうちに続編製作が決定。しかし、一作ごとに激賞を重ねていくヴィルヌーヴは『メッセージ』や『ブレードランナー2049』の製作のため一切の余裕がなくなり、肝心の続編監督は別の才能へと託されることになったのだ。
2016年6月、「続編の監督は、TVシリーズ『ゴモラ』のイタリア人監督ステファノ・ソッリマに決定!」との一報が駆け巡った時、おそらく多くの映画ファンたちは複雑な思いを抱えたことだろう。ヴィルヌーヴの不在を嘆くと共に、このイタリア人について「だ、だれ?」と首を傾げた人も多かったはず。続編への出演が決定済みだったベニチオ・デル・トロでさえ、ヴィルヌーヴが監督しないと知った時「大丈夫かな?」と不安がよぎったという。