2018.11.16
暗黒世界を描き続けてきた、並ぶ者のいない鬼才
その演出ぶりに出演者のベニチオ・デル・トロも太鼓判を押す。ヴィルヌーヴと比べても甲乙つけがたく、それぞれの撮影現場で素晴らしい時間を過ごしたという彼。その上でデル・トロは「ソッリマ監督は、どこかヨーロッパ的な感性を持った才能」であるとも評している。
言うなれば、一作目のヴィルヌーヴ監督は、どんなジャンルでもアッと言うほどの圧巻の語り口で観客を包み込む、いわば当代きっての天才だ。それに比べて二作目のソッリマは、ずっと裏社会をめぐるクライム・サスペンスやアクションを追究してきた職人的なところを併せ持つ。かといって、伝統的な枠組みにとらわれるわけではなく、個の視点の集積から社会全体の不気味なかたちを炙り出そうとする、とてつもない気概と執念を持った鬼才でもある。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(c)2018 SO
また、今回の作品では砂漠や荒野といったロケーションが多用される点も特徴的だ。クローズアップとロングショットの切り返しによって、あたかもその空間が無限に広がるかのような途方もないスケールの大きさが胸を抉ってやまない。こうやって地道に、とことん砂と泥にまみれながら、登場人物たちの内面のうごめきや葛藤、そしてフィジカルな臨界点までをも克明に写し取ろうとする。そこが彼の、観客を有無言わさず屈伏させる凄さなのだ。