2018.11.22
※本記事は『ボーダーライン』『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。※2018年11月記事掲載時の情報です。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』あらすじ
アメリカ国内の商業施設で市民15人の命が奪われる自爆テロ事件が発生。 犯人一味がメキシコ経由で不法入国したと睨んだ政府は、 国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れる任務を、 CIA工作員のマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に命じる。それを受けてマットは、 カルテルへの復讐に燃える旧知の暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。 麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、 カルテル同士の戦争を誘発しようと企てる。 しかしその極秘作戦は、 敵の奇襲やアメリカ政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招いてしまう。 メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、 兵士としての任務と復讐心、そして人質として保護する少女の命の狭間で、 過酷なジレンマに直面していく……。
Index
観客を驚かせた前作の主演女優エミリー・ブラントの不在
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は2015年に製作された『ボーダーライン』の続編にあたる。前作に引き続き作品の評価はとても高い。さらに北米での興行収入を比較すると現時点で続編の方が若干上回っており、ビジネス的な観点から見ても成功を収めたと言えるだろう。
ただしこの作品、単純に続編と呼ぶには異例な点が多い。というのも、ストーリーこそ前作の内容と地続きでありながら、中心的なキャストやスタッフの不在が目立つのだ。監督のドゥニ・ヴィルヌーヴがイタリア人監督ステファノ・ソッリマにバトンタッチしているのはすでに別稿で書いたが、他にも撮影監督のロジャー・ディーキンス、音楽のヨハン・ヨハンソン(2018年2月に死去。本作はヨハンソンに捧げられている)の名もここには存在しない。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(c)2018 SO
そして最も驚かされるのは、前作で主人公を演じたエミリー・ブラントがここでは一切登場しないところである。一体全体、主人公が続投しない続編などあり得るのだろうか。これは魂を失った、名ばかりの続編に成り下がるのではなかろうか————ファンの間でそんな不安が噴出したのも当然といえば当然か。
だが、結論から先に言えば、本作は文句なしの素晴らしい作品に仕上がっていた。しかも筆者には、このエミリー・ブラントの予想外の「不在」こそが、本作をなお一層興味深いものに仕立て上げたように思えてならないのだ。