2018.11.16
名匠ソッリマがこのプロジェクトに感じた運命的なもの
では、当のソッリマはなぜこの続編企画に惹かれたのだろう? きっかけは全くの別企画でプロデューサーと打ち合わせをしている最中、その人物が『ボーダーライン』の続編脚本を手にしていたことにある。
一作目『ボーダーライン』に心底惚れ込んでいたソッリマは、ぜひ読ませてくれと頼み込む。そして案の定、その圧倒的な筆致と思いがけないストーリー展開にはまり込んでしまったのだそうだ。
と同時に、ソッリマはこの脚本の中に、これまで自身がイタリアにて追究し、築き上げてきたものと非常に近しいものを感じ取った。もしこの映画を自身の手で監督できるとすれば、自分の持ち味や特殊性を一切損なうことなく、本来の自分に最も近い形でハリウッドの第一歩を踏み出せるに違いないーー。
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(c)2018 SO
おそらく彼はこの一作にチャンスの匂いを感じ取ったのだろう。こんな機会はもう二度と巡ってこない。彼は自分が全キャリアを賭けて情熱を注ぎ込むべき場所をここに決めたのである。
かくしてソッリマの起用が決まると、彼はこの脚本にさらなる磨きをかけるべく、さっそく脚本家のテイラー・シェリダンに掛け合ってストーリーの練り直しに着手する。
かねてよりソッリマは、作品のリアリティや、独創的なアイディアを追い求めるタイプだ。そこで二人は内容についてじっくりと話し合った上で、最初に書かれた脚本があまりに膨大で複雑な点に目をつけ、余分なところを削って、コアとなる部分に厚みを持たせるよう改善を施していく。さらに当初の予定に反して「アレハンドロ(デル・トロ)とマット(ジョシュ・ブローリン)の関係性」を前面に押し出しながら、大きな肉付けを行っていったという。
運命に翻弄されているようでいて、その実、どこか大河の流れのごときストーリーラインの重厚さをひしひしと感じるのも、きっとこの忍耐強い改稿作業の賜物なのだろう。