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『プライベート・ケース』ジョディ・フォスターが深層心理の扉を開け放つ、フレンチ・ミステリー

©LES FILMS VELVET ‐ BUENOS HAIR ‐ FRANCE 3 CINEMA

『プライベート・ケース』ジョディ・フォスターが深層心理の扉を開け放つ、フレンチ・ミステリー

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 サスペンスかと思えばコメディ風でもあり、精神分析ドラマかと思えば素人探偵の推理ものへと変貌する─。ジョディ・フォスターがフランス映画で初主演を担う本作は、的確なジャンル名で言い表すことの難しい、得体の知れない一作である。まるで作品内にいくつもの鏡を併せ持ち、映し出される像がそれぞれに自分を主張しているかのようだ。


 フォスターが演じるのは、アメリカ生まれでフランス在住の精神分析医リリアン。結婚もしたし、子供もいる。けれど今は離婚して一人で生きている。


 ある時、長らくセラピーに通う女性患者ポーラが亡くなった。状況から考えて自殺の可能性もあるという。そんな兆候は全く見られなかったのに、なぜ? 患者が死去した例は過去にもあったが、今回だけはどこか様子が違う気がする。やがて彼女は、ポーラの娘や夫がこの件に深く関わっているのではないかと疑い始め…。


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フォスターにしかできない境地



 この映画でいちばん目を引くのは、やはりジョディ・フォスターのフランス語の堪能ぶりだ。意外と知られたことではあるが、実際に触れるとこれほど流暢なのかと心酔せずにいられない。


 ちなみに、習得のきっかけは9歳の頃。それまで海外旅行経験のなかった母エヴリン(ジョディの幼い頃からマネージメントを担っていた。2019年に91歳で死去)がフランスを旅してすっかりその国や文化にハマってしまい、フォスターに「フランス語のイマージョンスクールに通って、フランス映画の俳優になりなさい!」と告げ、すべての授業をフランス語で行うリセ・フランセ・ドゥ・ロサンゼルスに入学させた。最初の内はかなり苦労したものの、フォスターは持ち前の負けず嫌いの精神で、言語のギャップを克服したのだという(*1)。



『プライベート・ケース』©LES FILMS VELVET ‐ BUENOS HAIR ‐ FRANCE 3 CINEMA


 ただし、『プライベート・ケース』(25)は言葉の堪能ぶりをひけらかす映画ではない。私が「目を引く」と記したのは、主人公が長くこの国で暮らしながら、いまだに異邦人としての孤独や、拠り所のなさ、さらに深層心理に埋もれた“何か”を抱えて生きていることが、このフランス語の堪能ぶりや、悪態を吐くときだけ飛び出す英語にギュッと凝縮されているように感じるからだ。


 これはフォスターにしか表現し得ない、彼女だからこそ真に共鳴し、輝かせることのできる、実に興味深い役柄なのである。




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