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『マイノリティ・リポート』SF映画の世界が現実に!?フューチャリストの活躍と現実世界への反映

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『マイノリティ・リポート』SF映画の世界が現実に!?フューチャリストの活躍と現実世界への反映

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オープンセットで撮影されたジェットパック



 アンダートンは、下層階級が暮らす住宅地の路地裏に逃げ込む。犯罪予防局の捜査官たちは、背中にジェットパック(ホバーパック)を背負っており、これで飛行しながらアンダートンを追い詰める。


 スピルバーグはこの場面の撮影を、ブルーバック・ステージなどではなく、オープンセットで行なうことを望んだ。そこで、ランティエリとスタントコーディネーターのブライアン・スマーツが、バーバンクのワーナー・ブラザーズ・スタジオに、長さ122m、高さ15mの巨大なやぐらを組み、最大8人の俳優をワイヤーで吊るして自由に移動させられる、油圧リグを組み立てた。彼らの撮影には、空中に張ったワイヤーをリモートコントロールで制御するSpyderCamも使われている。



『マイノリティ・リポート』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 さらにILMは、やぐらやワイヤーを消去し、セットの建物を4階建てから12階建てへと拡張させた。さらにジェットパックの噴射炎とヒートウェーブも合成している。ちなみにこのシーンのアクションは、大部分トム本人が演じているが、一部スタントマンに頼った場面(地面スレスレで飛行するシーン)もある。そういったカットでは、スタントマンの顔をトムのものに置き換えている。


 ちなみにこのようなジェットパックには、古い歴史がある。最初の飛行実験に成功したのは、ベル・エアクラフト社の「ロケットベルト」という装置で、1961年にエンジニアの ハロルド“ハル”グレアムがチャレンジした。このロケットベルトは、映画『007/サンダーボール作戦』(65)や、ロサンゼルス・オリンピック開会式などでも活躍している。現在も、イベントやスタントショーの分野では立派に現役()だが、本来の目的だった軍事の分野では実用化されなかった。


 現在は急速に開発(*6)が進み、元イギリス海兵隊のリチャード・ブラウニングが設立したグラビティ・インダストリーズ社の「ダイダロス」、実際にドバイ政府に災害救助・市民防衛用として採用された、ニュージーランドのマーティン・エアクラフト社の「マーティン・ジェットパック」、ウォータージェット・フライボードを考案したフランキー・ザパタが新たに開発した「フライボード・エア」などが発表されている。


*6 これは『マイノリティ・リポート』に触発されたというよりも、『アイアンマン』(08)の影響の方が大きいだろう。




多脚歩行ロボットスパイダー



 犯罪予防局がアンダートンの捜索に用いているのが、3本の触手で歩行する多脚歩行ロボット「スパイダー」である。だが映画的にかなり誇張された、金属製のタコのような不気味なデザインになっており、PDI/ドリームワークスがCGで表現している。



『マイノリティ・リポート』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 現実世界で言えば、ボストン・ダイナミクス社のSpotMiniが、かなり近い存在と言えようか。これがもっと小型化すれば、劇中のスパイダーのような働きが期待できよう。


 だがこの目的に、もっと適していると思われるのが、MAV: マイクロエアビークルと呼ばれるスパイロボットだろう。これはハチドリやハエ、蚊などを模した超小型の無人航空機で、オランダのデルフト工科大学や、米ハーバード大学、米ジョージア工科大学、台湾の淡江大学、米ハネウェル社、イギリス軍などが開発を行っている。しかしこれだと、ヘタすると可愛く見えてしまう可能性がある。映画として考えた場合、やはりクモ型の多脚歩行ロボの方が、より不気味さが強調されるだろう。


 そういったことを踏まえると、現在もっとも近い所にいる企業は、ドイツのオートメーション技術会社フエストである。産業用ロボットメーカーの大手であるが、アリ、チョウ、トンボ、コウモリ、タコ、クラゲなど、あらゆる形状の生物模倣ロボットを研究しており、世界各地の大学、研究所、企業、個人発明家らとバイオニック・ラーニング・ネットワークを設立して開発を進めている。最近もクモ型ロボットの研究を発表したばかりだ。




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