(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『マイノリティ・リポート』SF映画の世界が現実に!?フューチャリストの活躍と現実世界への反映
2018.11.13
サスペンスの重要な鍵、虹彩認証技術
この映画におけるサスペンスの重要な鍵になっているのが、虹彩スキャン(*4)による 個人認証技術だ。これは犯罪予防局への入室や、地下鉄への乗車、本人に直接呼びかける広告(インタラクティブ・ビルボード)など、劇中の随所に登場する。
ちなみに、このインタラクティブ・ビルボード映像は、普段CI(コーポレートアイデンティティ)やCMなどを手掛けている 3リング・サーカス・フィルム社が、レクサス、ブルガリ、ギネス、リーボック、アメリカン・エキスプレス、ペプシ、GAP、ノキアなどの架空広告を作成し、ILMとアサイラムVFXが合成したものだ。
一方で犯罪予防局は、逃亡するアンダートンを追い詰めるために、虹彩認証技術を活用している。そこでアンダートンは、眼球を別人(*5)のものにする移植手術を受け、元の眼球を持ち歩いてID確認に使用するなど、犯罪予防局の裏をかく作戦に出る。
『マイノリティ・リポート』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
実際にインドでは、固有識別番号庁(UIDAI)が09年から世界最大の生態認証プログラム「アドハーシステム」をスタートさせている。これは、日本で言えばマイナンバー制度に類するものだが、虹彩認証、指紋認証、顔認証の3つを併用したシステムで、登録者はすでに国民の90%以上に相当する12.2億人に達している。
また現在、多くの国の空港の出入国手続きで虹彩認証が利用されており、『マイノリティ・リポート』的な世界は現実に近付いている。
*4 劇中やメイキング映像では網膜スキャンと説明しているが、これだと対象者が顔を突き出して固定し、眼球に赤外線を照射する手順を踏まなければならない。映画で描写されているような瞬時の認識は、虹彩スキャンでないと無理なのだ。
*5 この眼球の元の持ち主は、ヤカモトという日本人っぽい名前の人物らしい。これは『ブレードランナー』(82)に登場した、「強力わかもと」のサイネージのパロディなのだろうか?