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『ロスト・イン・トランスレーション』名匠たちに愛される「トーキョー / ニッポン」の魅力

(c)2003 LOST IN TRANSLATION INC.

『ロスト・イン・トランスレーション』名匠たちに愛される「トーキョー / ニッポン」の魅力

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『ロスト・イン・トランスレーション』あらすじ

ハリウッド俳優のボブ・ハリス(ビル・マーレイ)はウイスキーのCM撮影のために来日するが、撮影現場では言葉の厚いの壁に阻まれ、うまく意思疎通が図れない。ホテルではアメリカにいる妻から度々送られてくるFAXにうんざりさせられ、疲れているのに眠れず、一人、ホテルのバーで過ごす日々。一方、シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は、売れっ子カメラマンの夫について来日し、たまたまボブと同じホテルに滞在していた若妻。仕事で多忙な夫とはすれ違い、ボブと同じく不眠気味であった。互いに孤独感を抱えた二人は出会い、ホテルのバーで初めて言葉を交わす。シャーロットはボブを誘って東京の街に繰り出し、二人はシャーロットの友人である日本の若者たちと、クラブやカラオケで開放的な時を過ごす。かなり年の離れた二人であったが、いつしか、異国東京で行動を共にするようになっていた。


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    東京は映画の舞台にふさわしい街?



     『ロスト・イン・トランスレーション』は日本で全編撮影されたが、外国映画の日本ロケは珍しい話ではない。東京に限っても、戦後間もない1948年にはハンフリー・ボガート主演の『東京ジョー』(48)が早くも東京でロケされている。もっとも、ボガートは来日したわけではなく、代役が日本で後ろ姿を撮影したのみ。それ以外のシーンは風景を大量に撮影してハリウッドに持ち帰り、スクリーンプロセスを使うことで、あたかも日本にボガートが降り立ったかのように見せている。


     『ワイルドスピードX3  TOKYO DRIFT』(06年)でも、渋谷の雑踏シーンはゲリラ撮影されたものの、流石に渋谷のスクランブル交差点でドリフトなんぞ出来ないので、カーチェイスシーンは全てアメリカで撮影したうえで日本の背景を合成しており、『東京ジョー』の頃とさほど変わらない。そのため、標識などのディテールで妙な部分が出てきたりする。


     その点、日本映画は――というと、東京が舞台でもロケに融通が効く地方都市で撮影することが多い。例えば、『新宿スワン』(15年)はタイトルからして新宿が舞台だけに、実際に歌舞伎町近辺で撮影されているが、歩くシーンぐらいは可能でも、乱闘シーンなど撮影に手間がかかる場面になると、そうはいかない。そこで撮影に協力的な地域かつ、歌舞伎町に似た場所を探すことになる。


     結果、選ばれたのは静岡県浜松市。一見、歌舞伎町とは似ても似つかないように思えるが、繁華街の道幅や飲食店の並ぶ通りの雰囲気が似ており、背景に新宿の高層建築やネオンを合成すると、映画を観れば分かるとおり、浜松の町並みを知らなければ、まず気づかない。


     浜松以外にも、都市の景観、工場地帯、港、地下鉄が近くに揃う神戸もロケに使用されることが多い。あるいは、地方に大がかりなセットで東京の一区画を作ってしまうこともある。『容疑者 室井慎次』(05年)では、新宿の繁華街を捜査員たちが追う中、大型トラックに被疑者が轢断されるシーンを撮影するにあたって、福島県いわき市に、伊勢丹からアルタ前までの200メートルをセットで再現。


     『ドラゴンヘッド』(03年)では、全編をウズベキスタンで撮影し、渋谷駅を全長150メートルにわたってセットで再現している。アメリカ映画の日本ロケに限らず、日本映画でも規模が大きくなればなるほど、東京を舞台にした作品を撮るには、東京から離れなければならない。



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