キーティング門下生たちのその後
そして、『いまを生きる』の同窓生たちも、あれ以降、各々の俳優人生を歩んだ。イーサン・ホークはジェネレーションX(ケネディ政権とベトナム戦争終結の間に生まれた世代の俗称)の代表として『リアリティ・バイツ』(94)に出演し、盟友リチャード・リンクレイターとコラボした『恋人までの距離』シリーズや『6才のボクが、大人のなるまで。』(14)等で評価され、今年は教会と企業の悪質な関係を知る神父に扮した『First Reformed』で再び賞レースを賑わせている。
『いまを生きる』ではキーパーソンとなる生徒、ニールを演じてアカデミー賞に値する名演と評されたロバート・ショーン・レナードは、『The I Inside』(04)を最後に映画を離れ、TV界にシフト。『Dr.HOUSE』(04~)のジェームズ・ウィルソン博士役等でキャリアを積んでいる。ジョシュ・チャールズは『S.W.A.T』等のメジャー映画とTVシリーズの両輪で、出演作が年間3~4本のハイペースを刻んでいる。ジェラルドを演じたジェームズ・ウォーターストンは『Flesh and Bone』(15~)等のTV出演がメインだ。父親のサム・ウォーターストン、義妹のキャサリン・ウォーターストンも同業の俳優一家の一員であることはご存知だと思う。また、チャーリー・ダルトン(ヌワンダ)を演じたゲイル・ハンセンは2~3本の映画とTVに出演後、俳優を引退。今はクリエティブコンサルタントの肩書きで映画製作に関わっている。
そして、突然の死に接して
30年は少年たちを大人にした。そして、彼らに大きな影響を与えたロビン・ウィリアムズ、または"ロビン・キーティング"は、2014年8月11日、カリフォルニアの自宅で遺体で発見される。検死の結果は自殺だった。享年63歳。理由に関しては様々な考察がなされたが、ここでそれを検証するのはやめよう。そのあまりにも早い死に接して、親友のビリー・クリスタルは「私たちの"コメディの銀河"で最も輝く星」という弔辞を発表し、バラク・オバマ前大統領は初期の代表作『モーク&ミンディ』でロビンが演じた宇宙人、ミンディに因んで、「彼は異星から地球に降り立ったエイリアン。私たち人間の魂の琴線に触れる存在だった」とコメントした。
舞台が宇宙にまで広がる破格の評価は、ロビン・ウィリアムズの才能を論じる上で決して大袈裟ではないだろう。しかし、それよりも、あの涙で潤んだような青い瞳で言葉にならない何かを伝えようとする姿を、もう2度と、得意のライブで観られないのは淋しい。世界中のファンが共有する喪失感は、とりあえず、『いまを生きる』を始め出演作を観ることで埋めるしかないのだ。
文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
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