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『クリード 炎の宿敵』名脚本家スタローンが甦らせた、ロッキーシリーズの魂

(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

『クリード 炎の宿敵』名脚本家スタローンが甦らせた、ロッキーシリーズの魂

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脚本家としての本領を発揮したスタローン



 そのマッチョなイメージから忘れられがちなのだが、「ロッキー」はそもそも無名時代のスタローンが自ら主演するために生み出したキャラクターであり、三日間で脚本を書き上げたエピソードは映画界の伝説にもなっている。『 ロッキー』(76)は大ヒットしただけなくアカデミー賞の作品賞と監督賞に輝き、スタローンも主演男優賞と脚本賞にノミネートされた。以降、スタローンはシリーズすべて(『クリード チャンプを継ぐ男』は除く)の脚本を書き、『 ロッキー2』(79)、『 ロッキー3』(82)、『 ロッキー4/炎の友情』(85)、『 ロッキー・ザ・ファイナル』では監督も務めている。


 つまり「ロッキー」の物語もロッキーというキャラクターもロッキーを取り巻く登場人物たちも、スタローンが生み出し、育ててきたのである。それをハッキリと思い出させてくれたのが『ロッキー・ザ・ファイナル』だった。同作のロッキーは、愛妻エイドリアンを亡くし、“エイドリアンズ”というイタリアンレストランを経営して暮らしている。店の客に栄光の時代のボクシング試合の話をして聞かせ(これも誤解されがちだがロッキーはおしゃべりキャラである)、そしてエイドリアンの命日には、彼女との思い出の場所を訪ねて回るのだ。


『ロッキー・ザ・ファイナル』予告


 『ロッキー・ザ・ファイナル』が思い出させてくれたのは、スタローンが「ロッキー」シリーズを通じて人生そのものを描くことができる名脚本家である、ということだった。「年老いたロッキーが、若いボクシングチャンピオンとエキシビジョンマッチで試合する」という一見バカげたストーリーだが、スタローンは切々とした悲哀と説得力に満ち、それでいて観客を鼓舞する作品をものにしてみせた。スタローンがロッキーを知り尽くして、そしてシリーズの原点に真摯に向き合える脚本家だったからこそできた芸当だろう。


 そんなスタローンが『クリード 炎の宿敵』で、久々にロッキーが絡む映画の脚本を書いた。しかもライアン・クーグラーと主演のマイケル・B・ジョーダンという若い二人が生み出したアドニス・クリードというキャラのその後も引き継いで。正直「今さら老兵がどういうつもりなのか?」という疑念と不安が脳裏をよぎったことは否定できない。スタローン自身、ロッキーの物語は『ロッキー・ザ・ファイナル』で完結しており『クリード』は新しい世代の物語だと発言していたのだから。


 当初、ライアン・クーグラーが撮るつもりだった続編にどんな構想があったのかはわからないが、スタローンの発言によると、アポロを再登場させるプランを練っていたらしい。スティーヴン・ケイプルJrもまたアポロの再登場を検討し、カール・ウェザースに声だけで出演してもらうことを真剣に考えたが、最終的に作品の意図にそぐわないからと断念したという。



『クリード 炎の宿敵』(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


 そしてスタローンが書いた本作の脚本は、前作によってはからずも継続することになったロッキーの物語にきっちりと後始末を付け、同時に次の世代への継承という『クリード』本来のテーマをみごとに描き出すことに成功していた。しかも『ロッキー4 炎の友情』で悪役扱いだったソ連の冷血ボクサー、イワン・ドラゴを再登場させ、彼のその後の人生までカバーするというオールドファンへの配慮も織り込んで。



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