(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
『クリード 炎の宿敵』過去と対峙するイワン・ドラゴ/ドルフ・ラングレンの物語
※本記事は物語の核心やラストに触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『クリード 炎の宿敵』あらすじ
『ロッキー4/炎の友情』で最大のライバルにして親友のアポロは、ロシアの王者イワン・ドラゴと対戦。壮絶なファイトを繰り広げた末に倒され、そのまま帰らぬ人となった。あれから歳月が流れ、ついにその息子同士がリングに上がる。シリーズに新風を吹き込んだ傑作と全世界から大絶賛を受けた『クリード チャンプを継ぐ男』でロッキーのサポートを受け、一人前のボクサーへと成長した亡きアポロの息子、アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)。対する相手はドラゴの息子、ヴィクター。ウクライナの過酷な環境から勝ち上がってきた最強の挑戦者だ。アドニスにとっては、父を殺した男の血を引く宿敵となる。アポロVS.ドラゴから、アドニスVS.ヴィクターへ。時代を超えて魂のバトンが手渡される因縁の対決。絶対に見逃すわけにはいかない。世紀のタイトルマッチのゴングが、いま鳴り響く!
Index
映画の冒頭を飾った因縁の親子、イワン&ヴィクター
映画『クリード 炎の宿敵』が、冗談交じりに「『クリード2』ではなく『ロッキー4/炎の友情2』だ」と言われる所以は、ひとえにドルフ・ラングレンが33年ぶりにイワン・ドラゴ役を再演したことに尽きる。『クリード 炎の宿敵』では、主人公アドニスの父アポロをエキシビジョンマッチで死に追いやり、後にロッキーに試合で敗れたソ連人ボクサー、イワン・ドラゴが再登場。さらにイワンの息子ヴィクターが、ヘビー級チャンピオンとなったアドニスに、過去の遺恨を晴らそうと挑戦してくるのだ。
前作『クリード チャンプを継ぐ男』(15)は、「ロッキー」シリーズの生みの親であるスタローンの発案ではなく、シリーズのファンだったライアン・クーグラー監督からの持ち込み企画だったことは前の記事でも述べた。しかしクーグラー監督は『ブラックパンサー』(18)にかかり切りになったことで『クリード』の第二作から降板し、2006年の『ロッキー・ザ・ファイナル』以来12年ぶりに、スタローンが「ロッキー」ユニバースの脚本を書いたのが『クリード 炎の宿敵』ということになる。
『ロッキー4/炎の友情』(85)で初登場したイワン・ドラゴは、ソ連の国家的威信を背負った超人的なボクサーで、ほとんど感情を表すことのないサイボーグのような存在として描かれていた。そのイワン・ドラゴが、『クリード 炎の宿敵』では冒頭のシーンから登場する。
『クリード 炎の宿敵』(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
かつてはソ連の誇りだったイワンは、今ではウクライナの安アパートに暮らし、再起の望みを息子ヴィクターに託してボクサーとしてスパルタ指導をしている。ソファーに寝ていたヴィクターを起こしてランニングへと促す冒頭のシーンにセリフは一切ない。ただ、明らかに幸福ではない親子の姿と、続くシーンでヘビー級チャンピオンとなり恋人ビアンカにプロポーズする、アドニスの幸福な姿が対比されるのだ。なんとも皮肉な描写である。