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『コラテラル』画期的なデジタル撮影で映し出すL.A.の官能的な夜

TM & (C) 2004 DREAMWORKS LLC AND PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. TM, (R) & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All rights Reserved.

『コラテラル』画期的なデジタル撮影で映し出すL.A.の官能的な夜

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デジタルシネマの過渡期に編み出された「夜の生地」



 さて、本作はマイケル・マン言うところの「L.A.の夜の本質を捉える」ため、2004年の時点のメジャー映画では画期的なことに、全編の80パーセントが高解像度のデジタルカメラで撮影されている。従来の35mmフィルムでは、夜間に人間の肉眼で見えるものをリアルに映すことは不可能だと判断したらしい。


 ハリウッド・メジャー映画で初めて全編をデジタル(HD24P)で撮影したのは『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02/監督:ジョージ・ルーカス)というのは有名だが、当時はハイビジョンの急速な発達と共に、いわゆる旧来の解像度の低い「ビデオ撮影」とは異なる形で、映画界でもデジタルカメラが普及し始めたばかりの頃だ。


 マイケル・マンはハード面の進化、新しい機材などにも非常に敏感な人。『コラテラル』の劇中でヴィンセントは「ダーウィンの法則」について何度か口にするのだが、まさしく環境の変化に応じた適者生存の実践が、長年ヒットメーカーとして走り続けられる大きな理由のひとつだろう。



『コラテラル』TM & (C) 2004 DREAMWORKS LLC AND PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. TM, (R) & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All rights Reserved.


 『コラテラル』で主に使用されたのは、当時発売されたばかりであったトムソン・グラスヴァレー社の「VIPER」(ヴァイパー)というフィルムストリームカメラだ(さらに独自の改造を加えているらしい)。これは「フィルムストリームモード」による撮影で、照明なしのまま夜のロケーション風景を鮮明な色味で捉えることができる。それを20%のフィルム撮影した映像素材と合わせた。本作のエレガントな色気を湛えた「夜の生地」は、デジタルシネマの過渡期だからこその繊細な工夫で編み出し得たものだという気もする。



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