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『コラテラル』画期的なデジタル撮影で映し出すL.A.の官能的な夜

『コラテラル』画期的なデジタル撮影で映し出すL.A.の官能的な夜


※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


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マイケル・マン監督の抜群のセンスが光る“CITY OF NIGHT”の魅惑



 ひとつ企画の妄想。もしマイケル・マン監督の人気作品投票を行ったら、どんな結果になるだろう?


 おそらく総合トップに輝くのは、結構ぶっちぎりで『ヒート』(95)かなと。問題は第2位以下である。『刑事スタスキー&ハッチ』(75~79/主に脚本に参加)や『特捜刑事マイアミ・バイス』(84年~89/製作総指揮)といったテレビシリーズも含めると、長年のキャリアの中で本当に多彩な題材を手掛けており、秀作・佳作がひしめき合っている。この凄腕娯楽職人のフィルモグラフィーをどんな重心で捉えるかは、受け手の世代や好みによって、ずいぶん変わってくるように思えるからだ。


 そこで筆者が推したいのが2004年の『コラテラル』である。公開当時、善玉専科のイメージが強いトム・クルーズが珍しく悪役を演じたことで話題になったが、何より夜の都市空間の描写が最高に官能的なのだ。DVDの特典ディスクに収録されているメイキングのタイトルは“CITY OF NIGHT”だが、これが本編タイトルでも良かったほど。個人的には『ヒート』より上に置きたいフェイバリット作品であり、投票が一本限定であれば間違いなくコレに票を投じる。



TM & (C) 2004 DREAMWORKS LLC AND PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. TM, (R) & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All rights Reserved.


 舞台はロサンゼルス。まずは空港に、銀髪頭に無精ひげ、サングラスとグレーのスーツに身を包んだトム・クルーズが降り立つ。役名はヴィンセント。超一流のプロの殺し屋なのだが、まだその素性は提示されない(ちなみにここで彼と鞄の受け渡しをする男が、一目瞭然のジェイソン・ステイサム。カメオ出演=ノンクレジットのちょい役だが、主役級の存在感なのでびっくりする)。


 まもなくイエローキャブ所属のタクシー運転手、マックス(ジェイミー・フォックス)が姿を見せる。『コラテラル』は彼が体験するたった一夜の物語だ(マイケル・マン自身の発言によると時間の推移は「午後6時4分から翌朝4時20分まで」とのこと)。移動する車の中で様々な人生が交差するL.A.ナイトクルージング――といった趣だが、いつもの平穏な夜とは大きく異なる運命が彼を待ち構えている。


 ちょうど夕方から日暮れに差し掛かった頃、マックスが乗せた客は検事の女性アニー(ジェイダ・ピンケット=スミス)。ダウンタウンに向かうまでの間、打ち解けた会話を交わしてちょっといいムードになるふたり。高速道路に入り、カーステレオから流れる曲に惹かれたアニーは「音量を上げて」と告げる。イギリスの人気ユニット、グルーヴ・アルマダがヴォーカルに黒人フォークシンガーのリッチー・ヘヴンス(2013年に死去)を迎えたソウルフルな名チューン“Hands of Time”(2002年のアルバム『LOVEBOX』収録)だ。



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 このセンス抜群の選曲でもわかるように、本作がまず差し出す夜は滑らかな黒い肌のようにメロウなトーンであり、ロードムーヴィーの流動美を備えているところが凡百のフィルム・ノワールとは一線を画す点だろう。ただ次に乗せた客がヴィンセントであり、マックスは悪夢のような“コラテラル”(巻き添え)を喰らうことになる。


 そこから裏通りの闇、突然タクシーの前を横切る二匹のコヨーテ、ひっそりした地下鉄など、交通網を骨格にした多層的な人工都市全体のボディ――そこには貧富の格差や雑多なコミュニティーの様子が蠢く――が迷宮のような魅惑の表情で浮かび上がってくるのである。



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