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『アイ,ロボット』「ロボット工学三原則」に正面から取り組んだ ※注!ネタバレ含みます。

(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『アイ,ロボット』「ロボット工学三原則」に正面から取り組んだ ※注!ネタバレ含みます。

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ロボットの合成



 問題は、ロボット役俳優を消去してその穴を埋めた、クリーンプレートと呼ばれる素材を作る必要があることだ。ロボットの代役たちは、グリーンの全身タイツ(*5)を身に付けており、グリーンバック合成と同じ要領で消去される。しかしNS-5は、一般的な人の体形よりも細身であるため、CGキャラクターを乗せても穴が埋まらない。


 従来のVFX技法でスプーナー刑事とサニーの絡みのシーンを考えると、まず2人の演技をモーションコントロール撮影し、次に同じカメラ軌道でウィル・スミスだけ撮ればクリーンプレートが作れる。しかしWETAデジタル社のスタッフは、ゴラムを手掛けた経験から、1人だけで演ずるウィル・スミスの芝居が不自然になることを懸念した。また2人の時と1人だけの時では、俳優同士の光の相互反射に違いが生ずるため、合成した画面にウソ臭さが残ってしまう。



『アイ,ロボット』(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 そのため本作では、基本的に別撮りを行わず、画面に空いてしまった穴は膨大なペイント処理で埋めることになった。ここで活躍したのが、デジタルドメインで開発されたコンポジットソフトのNukeである。ロボット代役によって隠れてしまった箇所をトラッキングし、背景の3Dジオメトリーを作って、元のテクスチャーをマッピングすることで、完全なクリーンプレートを実現させた。この作業には35セットのNukeを用い、10ヵ月間を要したそうである。


 またこの作品で初めて映画に使用されたツールが、エンコーダカムである。これはカメラのリグやクレーン、ドリーなどの動きをすべて3Dトラッキングし、リアルタイムで簡易CGと合成したり、VFX作業のモーションデータに反映させるシステムだ。


*5 NS-5は戦闘モードに入ると、胸が赤く光るようにデザインされている。その光が周囲の環境や、共演する俳優たちに反映されるように、ロボット役の俳優たちは乳首の位置に2つのライトを仕込んでいた。



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