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『タイタニック』ジェームズ・キャメロンが“世界の王”になった必然と奇跡

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『タイタニック』ジェームズ・キャメロンが“世界の王”になった必然と奇跡

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船上の『ロミオとジュリエット』



 史上初めて製作費が1億ドルを超えた映画として ギネス世界記録に載ったトゥルーライズ』を完成させた1994年、キャメロンは『タイタニック』の準備を本格化させる。自身のカメラ装置開発会社ライトストーム・テクノロジーズで働く弟のマイク・キャメロンに、潜水艇の外部に据え付けてパンやチルトの操作ができ、なおかつ水深4,000メートルのとてつもない水圧に耐えるカメラシステムの開発を指示。弟とスタッフを連れてパラオ諸島に出かけ、既存の水中撮影システムを使って訓練を兼ねたテスト撮影も行った。


 1995年5月、キャメロンとプロデューサーのレイ・サンキーニは20世紀フォックスの幹部に、次の映画を『タイタニック』にしたいと正式に伝え、さしあたってタイタニック号のところまで潜って撮影するために200万ドルほど出してくれと頼んだ。


 この時点で脚本もアウトラインもなく、キャメロンはシンプルに「船上の『ロミオとジュリエット』のようなものにしたい」と説明したという。タイタニック号で出会い、恋に落ち、引き裂かれる男女を主人公にすることで観客に感情移入させ、1,500人もの犠牲者を出した歴史上の悲劇をリアルに体感してもらうのが狙いだった。


 「悲運の恋人たち(star-crossed lovers)」を扱った創作として最も有名なシェークスピア劇と、史上最大の海難事故と言われたタイタニック号沈没の悲劇を組み合わせる――実にキャメロンらしい大胆な発想だ。ただしこの時点では脚本がなく、キャラクター造形にも手をつけておらず、したがって特定の俳優を想定しているわけでもなかった。



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 だが奇妙な偶然か運命か、ディカプリオはこの頃、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』を現代の話に大胆に翻案した『 ロミオ+ジュリエット』(96)のロミオ役で撮影に入っていた。ケイト・ウィンスレットも同じ頃、やはりシェークスピア原作のケネス・ブラナー監督・主演作『 ハムレット』(96)で、悲劇のヒロインであるオフィーリア役を演じることが決まっていた。


 フォックス幹部からタイタニック号撮影費用の了解を得たキャメロンは、脚本の前段階として小説のように細部を書き込んだ169ページものスクリプトメントを完成させる。1995年の夏から秋にかけては、10回におよぶ潜水撮影、予算交渉、専用スタジオの着工とあわただしく過ぎた。


 主役2人、ジャック役とローズ役(※4)のキャスティングが行われたのは95年から96年にかけての冬の頃だ。キャスティングディレクターのマリ・フィンから推されたディカプリオとウィンスレットに、当初キャメロンは乗り気でなく、無名俳優や新人を考えていたという。


※4…ジャックとローズのイニシャルのJとRは、ロミオとジュリエットのイニシャルを入れ替えたものになっている。キャメロンが男性主人公の頭文字をJにした理由は二つ。一つは、貧しい環境から独学で教養を身につけ、放浪生活での体験を小説に書いた米作家ジャック・ロンドンをモデルにしたこと。もう一つは、未来の可能性を信じる若きアーティストに、ジェームズ(James)・キャメロンが自身を重ねたことだ(ちなみに、劇中で示されるジャックのデッサンはすべてキャメロン本人が描いた。キャメロンは左利きなので、ローズのヌードを描く場面の手のアップは、キャメロンが描いている手を撮影したショットを反転させている)。


 先にローズ役のオーディションが行われ、グウィネス・パルトロウやクレア・デインズといった人気若手女優も受けたものの、リストから消されていく。ウィンスレットについては、“コルセット・ケイト”と呼ばれるほど時代物の仕事が目立ちすぎることに加え、英国出身であることもマイナス材料だった。ローズは米東部ブルジョワの娘という設定であり、それをアメリカ訛りの英語を話すことで示す必要があるからだ。



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 オーディションに臨んだウィンスレットは、アメリカ訛りの台詞で自信たっぷりに演じ、その演技力と魅力をしっかりキャメロンに印象づける。さらにイギリスから直接電話してきて、この役を切望していることを訴える積極性も買われ、キャメロンは彼女を選ぶことに決める。


 ウィンスレットとは対照的に、ディカプリオはジャック役にあまり魅力を感じていなかった。高く評価された『 ギルバート・グレイプ』(93)の知的障害の少年役をはじめ、人間そのものに焦点を当てる作品を好む彼は、ウィンスレットも読み合わせのためイギリスからロサンゼルスに駆けつけた1996年2月のオーディションの場でさえ、ビデオ撮影はしないでくれ、指定された台詞を読む気はないなどと言い出す。



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 どうにか台本読みを承諾させたキャメロンだったが、ディカプリオが台詞を読み始めた瞬間ジャックに変貌したことに驚嘆する。ウィンスレットとの化学変化も見事だった。キャメロンの心は決まったが、ディカプリオははっきりと返事をせず、脚本の書き直しを要求し、数カ月が過ぎる。キャメロンに説得され、ディカプリオ側が出演契約を結んだのは同年6月のことだった。



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