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『タイタニック』ジェームズ・キャメロンが“世界の王”になった必然と奇跡

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『タイタニック』ジェームズ・キャメロンが“世界の王”になった必然と奇跡

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感動場面の撮影に訪れた夕陽



 『タイタニック』は印象的な名場面の宝庫だが、船首でジャックとローズがキスをするシーンも間違いなくその一つだ。メキシコ・バハ半島の海沿いに建設されたタイタニック号のセットで、キャメロンは本物の夕陽を背景にこのシーンを撮影することにこだわった。日中の太陽光を使う他のシーンも含め、船のデッキでの撮影に確保されたスケジュールは8日間。だが7日目まで期待するような夕焼けにならず、船首でのシーンについては通しリハーサルをするのみだった。


 最後のチャンスとなる8日目も、午後からの曇天が日没1時間前まで続いていた。だが何かを予感したキャメロンは、スタッフを船首に集合させ準備を急がせる。まさにその時、紫がかった灰色の雲から、バラ色の太陽が出現。ディカプリオとウィンスレットが大急ぎで位置につき、キャメロンはクレーンに設置したカメラをリモコンで操作しながら「アクション!」と叫ぶ。2人の演技は完璧で、うまい具合に自然の風もいい方向から吹いている。キャメロンはまたとない幸運に興奮しながら、フレーミングを失敗しないよう必死にこのテイクを撮り終える。直後に太陽がまた雲に隠れるが、空はまだ赤く染まっていたので、もうワンテイク撮ったものの出来は今一つだった。翌日現像されたテイク1はフォーカスがやや甘かったことが判明したが、キャメロンはこの映像を気に入り、採用することに決めた。



(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 船首にたたずむジャックにローズが歩み寄ってから、キスをする2人からカメラが遠ざかるまでのシークエンスは、屋内に組んだセットと人工照明でアップを撮ったショットや、グリーンスクリーンに夕焼け空を合成したショットも含めて構成されている。だがカット割りを意識しながら注意深く見ると、船首に対して右前方のやや低い位置から2人をとらえ、少しずつ上昇しながら寄っていく自然光のショットを認識できるだろう(テイクは1回だが、別アングルのショットが挿入されて複数のショットに分割されている)。


 キャメロンはDVDのコメンタリーでこう語っている。「映画の制作中はこういうすばらしい瞬間がある。思い描いた通りに撮影が成功する瞬間だ」「これは突然に訪れた幸運で、神様は我々の味方だと感じた瞬間だった」


 この美しいシーンの感動をさらに高める効果を担うのが、タイタニック号の船首に託された象徴性だ。キャメロンはこの豪華客船の船首と船尾で起きる出来事を通じて、対照的な象徴を持たせた。ローズが身投げを試みた船尾は、過去、束縛、絶望、死の恐怖を表す。反対に、ジャックが鳥のように手を広げて「俺は世界の王だ!」と叫ぶ船首は、未来、自由、希望、そして生の喜びを象徴する。美しい夕陽のキスシーンに、そうしたポジティブな象徴が重なるからこそ――そして間もなく訪れる悲劇的な事故を誰もが知っているからこそ――この名場面が一層切なく胸に響くのだ。



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